背景はともかく、都の主張が不合理なわけではない。両端で有楽町線、半蔵門線と接続し、メトロの地下鉄ネットワークと一体不可分な同区間は、メトロの路線として建設するのが自然な話ではある。
両者のつばぜり合いは最終的に2021年、国土交通省の交通政策審議会が「運賃水準や乗換利便性など利用者サービスの観点や整備段階での技術的な観点からも、東京メトロに対して事業主体としての役割を求めることが適切である」とする一方で、都にメトロ株売却を促す答申を公表したことで決着した。
熱い押し付け合いとなった同区間だが、決して「不良債権」というわけではない。確かに総事業費約2700億円は、総事業費のおおむね4割が交付される国と都の補助金を加味しても過大な投資であり、同区間だけで見ればペイする事業ではない。だが、豊洲が湾岸エリアの玄関口としての存在感を高める中、都心東部の南北軸の必要性、重要性はますます高まっている。
東京メトロが完全民営化していれば、利益を押し下げる豊洲~住吉間の建設は実現しなかっただろう。メトロにとっては望んだ結果でなかったかもしれないが、投資家の理論から離れて、都市交通上意義のある路線が具体化したのは、交通営団の最後の置き土産だったと言えるのかもしれない。