「公平で公正」な叱責とは?
種明かしは後にするとして、まず「叱る」「指導する」ことについての研究データを紹介したい。叱ることは精神論になりがちだが、研究では意義が認められている。
最近、「叱るのが苦手」「指導が関係悪化を招く」として、部下の厳しい指導を避ける上司が増えている。しかし、職場の成長や従業員のスキル向上を考えると、的確な「叱責」は不可欠だ。
ある実験では、上司が適切に叱ることで職場の公正さや信頼感が維持され、組織全体の士気が高まることが示されている。
実験は、アメリカ中西部の大学に通う大学生385人を対象に行われた(クリストファー・ニューポート大学『従業員の叱責に関する対照的な情報によって変化する観察者の公正知覚』2023年)。
架空の職場で上司が部下を叱責する場面を観察させ、「その叱責が公正かどうか」について評価させた。学生たちは観察者の立場で、叱責が妥当か不当かを判断するという形式だ。