2つのシナリオから浮かび上がった事実

 実験では2つのシナリオが提示された。

 1つ目は「責任がある」とされたケースで、同僚がミスを犯し叱責される場面。観察者は「妥当だ」と感じることが多かった。一方、「責任がない」とされたケースでは、ミスとは無関係な同僚が叱責され、観察者は「不公平だ」と感じる傾向にあった。

 2つ目のシナリオでは、当初「責任がある」と思われた同僚が後に「責任がなかった」とわかる状況を示した。こういった場合、観察者は叱責を「不公正」と強く感じ、場面に不快感を抱くだけでなく、上司や職場全体への信頼感も低下する傾向が確認された。

 研究結果は、当たり前のことを言っているようで、よく考えると大事な結論を得ていると思う。

 まず、叱ればいいというものではない、ということだ。なかには、叱ることで上下関係を意識させる「イビリ」のようなものが存在する職場もある。

 このような行為がいかに、現場のモチベーションを減らしているか。上司が部下を叱る際に従業員が「公正だ」と感じるか否かが、職場の信頼に大きく影響することを示している。