激しい環境変化の中で、企業にとって終身雇用を保障することはますます難しくなっています。個人にとってみると、「新入社員として企業などに入社すれば一生安泰」とは言いづらい時代であり、従来のように一社に忠誠を尽くしても、それに見合うリターンを得られるかどうかも不透明です。

 このような状況の中で、個人は一つの企業内で通用するスキルを高めることでキャリアを形成していくスタイルから、複数の企業や副業などの経験を重ねてキャリア形成していくスタイルに変わりつつあるのではないでしょうか。

働く価値観は多様化
企業独自の特殊能力を身に付けたい人も

「どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力」を支持する学生が増えている一方で、「その会社に属していてこそ役に立つ企業独自の特殊な能力が身につく」ことを望む学生は、約2割いることもわかっています。汎用的な能力を求めるという人が多数ではありますが、企業独自の特殊な能力を身につけたいという個人の価値観も存在していることも見落としてはいけません。このように働く個人の価値観が多様化する中で、採用・雇用する企業側がその変化にどのように対応していくかは昨今の大きな課題です。

 一部の企業では、成長やキャリアに対する多様なニーズに応えるために、柔軟な研修や配置・配属の在り方を模索する様子が見られます。研修面ではあらかじめ用意されたコース群から、個々人の志向や課題感によって自由に選択できる選択型研修を提供しているところもあります。

 たとえば、大手電機メーカーでは、かつては企業主導で研修が用意され、そこに従業員が参加する形でしたが、現在ではプラットフォーム自体は会社側が用意しながらも、従業員自身がパフォーマンスを高めるために研修を選べるようになっています。別の会社でも、主体的に学びを得る機会として、階層別研修のほかに選抜型の研修や、従業員が必要なものを選んで勉強できる学びのプラットフォームの構築を進めています。

 人材配置面では、社員が複数の部門や役割を経験することで、多様なスキルを身につけられるようなクロスアサインなどの取り組みが見られます。先ほどの大手電機メーカーでは、有志メンバーによるプロジェクトベースで、今の部署に所属しつつも新しい仕事にジョインできるような仕組みを設計。これにより、社員は異なる業務やチームで働く能力を養うことができるようになっています。