声の大きな人に
丸め込まれないためには?

 こんな感じで、どこの会社にもピエール瀧のような名役者がいる。さて問題は、これらの役者の演じる大声に対して、付け込まれやすく、弱い企業が多いことである。特に真面目な善人が多い職場では、大声を出す人の作り出す空気とペースに巻き込まれてしまいがちだ。よって、それを防ぐために、事前に対策を作っておかなくてはならない。

 以下のようなことが必要となる。

進行役の導入: 効果的な進行役を設けることで、会議が円滑に進むよう支援する。進行役は、発言時間を管理したり、話題を適切に制御したりすることで、一人が過度に支配する状況に陥るのを防ぐ。

 例えば、5~6人の会議でも進行役を明確にし、任命することは、大声を出す人のペースに巻き込まれないために大変重要である。誰かが大声を出しても、「落ち着いて話してください」と進行役にたしなめられれば、そのペースに引きずられることが少なくなる。

会議のルール明確化: 会議におけるルールやガイドラインを設定し、全員がそれに従うことを確認する。例えば、「一人が話しているときは他の人は静かに聞く」などの基本的なルールを設けることで、秩序を保つことができる。多くの会社では、会議室に「会議のルール」という紙が貼ってあるが、会議の前に、それを読み上げることを習慣化しておくと、結構役に立つ。

平静を保つ: 相手が大声を出した場合も、冷静に対応することが重要である。感情的になると相手の思うつぼなので、淡々と、かつ論理的に対応することで、議論の質を保つ。感情的な発言には、具体的な事実やデータの提示を冷静に求めるようにする。

大声は窮地の印、という常識を作る:もし誰かが大声を出してその場に影響を与えようとした場合、それは話者が窮地にいて苦し紛れに発しているのである、ということを、社内、部内、課内で普段から常識化しておくことが重要だ。そのことによって、大声を出す人を牽制できる。

 同様に取引先が同様に大声を出した場合も、相手は何かしら隠したいこと、困っていることを抱えているのと同義である。むしろ「ラッキー」と認識して、そこで簡単に押し切られないで、その弱みを冷静に把握し、適確にそこを突いていくことで自分たちに有利な展開に持ち込める可能性が高まる。

 大声は、基本的に、特に何かを隠したいときや、自分に不都合な方向に話が進んでいくのを阻止したい場合に戦略的、または苦し紛れに発せられているのである。よって、少し冷静になれば、相手をぎゃふんと言わせる対応策が見つかるはずだ。

 ただし、もし相手がピエール瀧のような相当な役者である場合は、こちらも役者として対応する必要がある。

 たとえば、「おやおや、○○さんがそのように力説されるということは、相当重要なこととお見受けしました。なぜそんなに急がれているのですか」といった感じで生真面目に、かつしたたかに聞き返すことで、相手のペースにはまるのを阻止するのがよいだろう。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)