もちろん、これは誰が悪いという話ではない。人権派弁護士の皆さんは「被害者」を助けただけだし、国もその声に応えただけだ。消費者金融側も世間から叩かれ、厳しく規制されるだけの問題があったのは事実だ。

 みんなそれぞれが「正しい」と信じることをやった。しかし、その善意が皮肉なことに「貧しい若者のセーフティネット」を破壊した結果、「手取り早く現金を手に入れたい若者が犯罪グループの奴隷にされる」という新たな地獄絵図をつくっている。

 この状況が深刻化すれば、いずれ海外の違法組織も参入するだろう。かつて日本の闇社会が、「あいつらは数十万円で殺しもやる」と東南アジアや中国人の貧しい若者に犯罪を“外注”したのと同じように、今度は中国やロシアなど他国のマフィアが自分たちの手を汚さず、「貧しい日本の若者」に強盗や殺人などをやらせる、という悪夢のような展開もあるかもしれない。

 イギリスのことわざに、「地獄への道は善意で舗装されている」というものがあるが、消費者金融の規制強化からの「闇バイトの凶悪化」という現象を説明するには、まさしくこの言葉がピッタリではないだろうか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

凶悪すぎる闇バイトは絶対に減らない…取り締まりも報道も効果なしと断言できるワケ