これに対し、(2-2)の「確信犯的に、大事な情報を後ろにもっていきました」というパターンは、アニメやドラマ、マンガの台詞など、「シナリオ上の話し言葉」によく見られる気がする。実際、これらはもともと「書かれた言葉」であるがゆえに、情報の出し方がコントロールしやすい。
先に見た「おい、見たぞ、おまえがあいつに車の陰で金を渡しているところを」という江口の例文にしても、サスペンスドラマの台詞っぽさがあり、眺めているだけで火サスのテーマが聞こえてきそうだ。
川添 愛 著
また、アニメ『機動戦士ガンダム』に出てくる「見せてもらおうか、連邦のモビルスーツの性能とやらを」「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」「あえて言おう、カスであると!」なんかも、(2-2)のタイプであるように思われる。
一方、永田選手の「いいんだね、やっちゃって」については、永田さんが勢い余って「いいんだね」という不完全な文を言ってしまったのか、それとも確信犯的に語順を逆転させたのか分からない。
ただ、いずれにしても「怒りで不完全な文を言ってしまった」or「『やっちゃって』の部分をより効果的に伝えたかった」の二択なので、永田さんの物騒な心情が聞き手に伝わるという点では変わりがない。この台詞の迫力は、こういったところから来ているのかもしれない。