とはいえ、進める側も「電子マネーがどういうものなのか、よくわかっていなかった」のが実情で、社内にも慎重論、反対論は少なくなかった。

 たとえば、JR東日本副社長・会長を務めた山之内秀一郎氏は2008年の著書『JRはなぜ変われたか』で、「私はこの機能には懐疑的だった。それまで銀行などが一部で試行していたが、まったく普及していなかったし、小銭入れで十分だと思っていた」と告白している。

 椎橋氏や山之内氏が言及するように、電子マネーの研究開発は銀行・クレジット業界を中心に1980年代から行なわれていたが、普及に至らなかった最大のハードルは技術面以上に、「電子マネーとは何ぞや」の理解が追いつかなかったことにある。

 いつどこで使うものなのか、なぜ電子でなければならないのか、クレジットカードとは違うのか、利用者はもちろん開発者にもはっきりとした活用のイメージがなかったのではないだろうか。

IT・Suica事業が生み出す
営業利益は約162億円に

 Suicaとともに電子マネー黎明期を牽引したのが、奇くしくもSuicaと同じ2001年11月に誕生した「Edy(現・楽天Edy)」だ。