「県境またぎ路線」の苦悩
特急・急行が昭和末期~平成初期頃に全滅

陸羽東線『奥の細道湯けむりライン』陸羽東線『奥の細道湯けむりライン』 Photo:PIXTA

 営業係数ランキングの上位=費用対効果が低い区間の中でも、3位の陸羽東線(営業係数13465)、4位の花輪線、(同10916)、5位の飯山線(同10316)、6位の磐越西線、7位の水郡線、9位の米坂線には特徴がある。いずれも県境をまたいでいるのだ。

 同じ県内であれば、通学や基幹病院への移動などで、一定の鉄道利用が見込める。加えて、かつては特急・急行列車が県境の峠を越えたことで、長距離運賃と特急料金などが経営を潤していた。例えば、3位の陸羽東線なら「急行たざわ」(仙台駅~秋田駅)、9位の米坂線なら急行「あさひ」(新潟駅~仙台駅)などだ。

 これらの特急・急行列車の多くは、昭和末期から平成初期頃までに、全て姿を消している。かつ、県境の峠を越える国道はトラックが通れる程度に改修され、貨物輸送もほぼ全滅した。

 公開資料に記載されている「1987年と比較した利用状況(平均通過人員)の推移」では、営業係数のワースト区間は軒並み80%~90%減を記録している。各線とも1日の乗客は軒並み100人~200人程度、単価の高い「長距離移動」「特急・急行料金」がないとあっては、収入の減少で営業係数が悪化するのは当然だろう。

 また、県境区間は険しい山を越える上に、防災や治山などの対策がおざなりだったこともあり、がけ崩れなどによる運休も多い。上位区間のうち8位と9位の米坂線は22年8月の豪雨による被害で運休が続いており、約86億円という復旧費用を巡って、自治体とJR東日本の間で議論が続いている。2位の津軽線も被災による長期運休が続いており、自治体がバス・デマンドタクシー(「わんタク」)転換に同意する意向を示したため、このまま廃止となる可能性が高い、