「いったん学校を卒業してしまうと、その後の人生では誰も第1位のリボンを渡してくれないし、成績表を出してくれない。自分を高めるためにあらゆる努力をすることはできるけれど、あなたが働いている職場のシステムを変えるか、それともあなたの能力を評価してくれる職場を探すかは、自分自身が決めることよ」

 これはエヴァにとって新しい考え方でした。電話の最中、ようやくエヴァは腑に落ちたのです。

「なるほど、ゲームのルールが違うのね?」

書影『なめられない品格 誰からも信頼されるようになる8つの力』(飛鳥新社)『なめられない品格 誰からも信頼されるようになる8つの力』(飛鳥新社)
リサ・サン著、鹿田昌美訳

 エヴァは自分の〈一番の強み〉を知り、それを活用して、職場風土を分析し、自分の能力を活かした働きが認められ、報われるような変更を提言しました。その後、エヴァはほどなく主任に昇進し、今はクリニックの運営を目指せる立場にあります。そして何より重要なことに、自分の能力に自信を持っています。しかし、そこに至るまでには、職場の外的な圧力に気づいて、自分の能力を表明するための「言葉」を持つ必要がありました。

 ちなみに、女性だからといって、まったく偏見を持たないわけではありません。とりわけ権力を持つ女性の場合、優秀だからではなく、駆け出しの頃の自分に似ているという理由で、ついその人を昇進させてしまうことがあります。人生に仕組まれた偏見の悪影響を理解して、自分の中にも潜むひいきの感情を認識し、スキルとリーダーシップの評価基準を拡大することが大切です。