日立は減収減益、パナは増収増益
なのに株価の明暗は“逆転”
パナソニックHDも、事業再編を進めてきている。14年3月にはパナソニックヘルスケアを投資ファンドKKRが設立したパナソニックヘルスケアホールディングス(現PHCホールディングス)に売却、20年1月にはパナソニックホームズをトヨタとの合弁会社であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズに移管し、連結子会社から外した。
一方で、21年9月にはサプライチェーン(原材料や部品の調達から製品の販売に至る一連のプロセス)を最適化するソフトウェアを手掛ける、米ブルーヨンダーを総額約79億ドル(有利子負債の返済を含む、ブルーヨンダー公表ベースで約8633億円)で買収した。奇しくも、日立製作所と同じタイミングで米国のIT企業を買収したことになる。パナソニックHDは、ブルーヨンダーを買収した目的として、パナソニックが進めるサプライチェーンマネジメント(SCM)分野におけるDXを加速し、顧客企業の経営課題解決を推進するためだとしている。
パナソニックHDの24年3月期の業績は、売上高が約8兆4960億円、当期純利益が約4440億円となり、前期比で増収増益、当期純利益は過去最高を記録した。パナソニックHDでは、増収の要因として自動車部品などを手掛けるオートモーティブ事業や、ソフトウェアやシステムインテグレーションを手掛けるパナソニックコネクトやブルーヨンダーなどを傘下に抱えるコネクト事業の売上高が増加したことや為替レートの影響などを挙げている。また、増益の要因としては価格改定・合理化の進展、米国政府からの補助金などがあったとしている。
以上のように、決算で見れば日立製作所は減収減益、パナソニックHDは増収増益で最高益という状況だが、実は両社の株価の推移を見てみると明暗は逆転する。
日立製作所の株価(権利落ち修正後の終値)は22年3月末時点での1233円から24年8月末の3572円と3倍弱にまで上昇しているのに対し、パナソニックHDの株価は同期間で1188.5円から1212.5円となっており、ほとんど上昇していないのだ。
これは一体なぜなのか。両社の決算書と、株主還元の姿勢を示す指標とされる配当性向と総還元性向から、その理由について解説していく。