これは、茶席での作法のひとつでもあり、人と人との関係を和やかにしてくれる、知恵や工夫のかたちではないかと思っています。

和室でのふるまい。
襖の開け閉めは座ってから

 生まれ育った家に和室がなかったという人も増えてきました。訪ねた家で和室に通されたら、どうふるまってよいのか戸惑うことが多いのではないでしょうか。そんな時、スマートに動くことができたら、一目置かれることは間違いありません。

 まず基本として、和室は立ったまま出入りしません。必ず座って襖や障子を開け、座ったままにじって入るのが本来の作法なのです。

 襖障子の開け閉めの作法は、流儀によっていろいろありますが、これでなければ不正解というものではありません。手の動きが不自然でなく、大きな音を立てないように丁寧に開け閉めすれば、間違いはありません。その際、紙の部分には触れず、引き手や縁に手をかけるようにあつかいます。

「いつも感じのいい人」が仕事相手の自宅に招かれたとき、座ろうとしない場所
イラスト:おおのたろう拡大画像表示

畳の縁(へり)は
踏まない

 和室では、畳の縁は踏まないよう心がけましょう。理由のひとつに、畳の縁はそこに座る人の位を示す指標であったといういきさつから、縁を踏むことは、その家の格式をおろそかにする行為だと受け取られた歴史があります。

 また、豪華な錦などを使った縁は、畳替えの時も使い続ける場合があり、傷みやすい畳の縁はなるべく踏まないよう配慮したいものです。敷居や畳の縁を踏まずスマートに歩く姿は、配慮の行き届いた美しい姿に映るはずです。

すすめられるまでは
座布団に座らない

 和室の客間には、すでに座布団が置いてある場合が多いでしょう。すすめられたら素直にその上に座るのが、気持ちのよいふるまいであると私は思います。

 ただ、あらたまった挨拶の場合や謝罪の訪問ならば、座布団ははずして座り、主人が席に着くまで待ちたいもの。「どうぞ座布団をお使いください」とすすめられたら、座布団を使ってかまいません。

 会話の途中で口上を述べる、お願いごとをするなど、ここぞという時にはいったん座布団をはずして畳に座り直します。するとあらたまった空気になり、自分の熱意が相手に伝わりやすくなります。座布団を使わないことで、相手への敬意を示す行為となるからです。また座布団は足で踏まないようにしましょう。