客間の上座は、
入口からいちばん奥

 かつては、家の中のいちばん日当たりのよい場所に、客を迎えるためだけの表座敷や応接間がありましたが、現代ではおそらくリビングルームとして使われているのではないでしょうか。

 客として招かれ、リビングや座敷に通された時、どこに座るのがふさわしいのかを心得ていることは、大切なことです。

 まず、どんな部屋であっても入口からいちばん遠い奥が上座、手前側が下座ということを、基本形として覚えておきましょう。和室であれば床の間の前が上座となります。これは、茶菓子などを運んで出入りする際にじゃまにならないという、実質的な理由もあります。ちなみに、床の間とは掛軸や花を飾るための特別な空間です。腰かけたり、荷物を置いたりする行為はもってのほかです。

リビングでは
2~3人掛けソファが上座

 上座に座るか下座に座るかは、訪問先の方との関係性によって決まってきます。基本は「上座に客」ですが、「こちらにお座りください」と案内されたら素直にしたがうのもひとつの正解です。ただ、頼みごとをする場合やお礼で伺う場合、上司や先輩の家に挨拶に行く場合は、自ら下座に座るほうが自然でしょう。

 洋間では、長椅子(ソファ)が上座になり、1人掛けの椅子は格としてはその下になります。会社の応接間などに通された際には、来客は長椅子、と覚えておくと迷わずにすみます。

客間のしつらえを鑑賞するのも
礼儀のひとつ

 座敷に通された場合は、まず心を静めて床の間の掛け軸や花を拝見しましょう。

 洋間であれば、飾られた花や絵、置物といったその家のしつらえを見て、どのような趣味で用意してくださったのかを読み取りましょう。

 突然の訪問でないかぎり、招いた側としては、ささやかであっても客を歓迎する気持ちを込めて整えているはず。客間のしつらえを鑑賞し、それについての感想や感謝を述べるのは、客としての心配りではないかと思うのです。

 用意したしつらえについて話題にされるのは、招いた側にとってもうれしいこと。詮索されたくない物、言及されたくない物は、わざわざ客間には置かないはずなので、よく気づいてくださったと話題のきっかけにもなり、円滑なコミュニケーションを図る助けにもなるでしょう。