こうした観点で強みを持つ学校を挙げるならば、キリスト教系の恵泉女学園ですかね。あの学校は6年間毎日「感話」といって自分の悩んでいること、考えていることを皆に話すという時間を作っています。
先生や生徒が持ち回りで自分が感じたこと、考えていることを他の生徒の前で話すんです。内容は何でもいいので、中1のころは好きな映画や音楽、自分のペットのことなど、当たり障りのないテーマを話す生徒が多いようです。
しかし、回を重ねるごとに、テーマがだんだんと深くなってくる。そして、生徒たちは自分が何を言おうが決して否定されないということに気付くんだそうです。
他の生徒の話も聴くわけですから、いろんな人がいろんな意見を持っているんだなということがわかる。他人の意見も自分の意見も否定されるものではないことが理解できると、生徒たちは互いを認め合うことができるようになるといいます。6年間でさまざまな価値観に触れた経験は人生を生きていくうえで大きな財産になるに違いありません。
ーーその話は捜真女学校でも聞いたことがあります。自分をさらけ出しても大丈夫なんだという実感は「限りない安心感をもたらす」と在校生に言われたことがあります。
きっとセラピーのような効果があるんでしょうね。恵泉で特にご紹介したいのが、高3生が夏休みの最後に泊まりがけで行く修養会です。この行事には面白いルールがあって、勉強道具を持参してはいけないことになっています。高3の夏にですよ。
修養会での最後の夜は、暗闇の中でそれぞれの気配がしないくらい離れて、ひたすら自分の内面と向き合うそうです。高3の忙しい時期にあえて、そういう時間を作っているんですね。
ーー生涯にわたって忘れられない、特別な夜になるでしょうね。
他のプロテスタント系でもこうした修養会はあります。プロテスタント系で個性的なのは普連土学園。他校では礼拝堂があったり、階段・廊下に十字架や像などがあったりしますが、普連土の校内にはそうしたものがありません。
また頻繁に讃美歌を歌う学校もありますが、普連土にはそうした習慣がなく、心の中で歌うのだそうです。毎週水曜の朝に20分間行う礼拝も「沈黙の礼拝」。一言も発しない沈黙に時間です。中1の宿泊行事でも最終日の前日の夜、21時から翌朝7時までは”完全沈黙”。先生に用事があるときも筆談。これがね、今の子にはすごくきついんですよ。