自分は将来どうなるだろう……。そんな不安を持つ人は少なくないのではないだろうか。「いつまで第一線でいられるか」「いつまで他人と競えばいいのか」「いまいる友達は60歳になっても友達か」「気力体力はどうなるか」「お金は?」「いまのうちにやるべきことは?」など疑問がつきない。そこで本連載では、2025年に60歳を迎える奥田民生の10年ぶりの本『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』の中から、民生流の「心の持ち方、生きるヒント」を紹介する。「力まず自然体でカッコいい大人」代表の奥田民生は、これまでどのように考え、どのように働き、どのように周りとの関係を築いてきたのか。その言葉を見ていこう。(構成/ダイヤモンド社・石塚理恵子)
Photo by Takahiro Otsuji
アーティストはどのようにして曲をつくるのか
──アーティストって勝手に曲が頭の中に降りるのでしょうか?
奥田民生(以下奥田):ミュージシャンは「空から曲が降ってくる」とか、「曲がわいたときがアルバムを出すとき」とか、そんなふうに思う人もいるけれど、世間はそんなに甘くないし、そんなことはありえない。
空から降るのを待つにしても〆切がないと降ってこないし、〆切がないうちは「メロディが俺をよけて歩いてるんじゃないか」と思うくらい音楽が降りてこない。
だから俺にとって〆切は案外大事。
〆切のおかげで仕事ができる
──ミュージシャンにもわれわれ同様、〆切があるんですね
奥田:俺は基本、仕事に〆切がないとやらないし、〆切がないとやる気が起きない。
それは若いときもいまも一緒で、〆切間近になるとメロディがちょっとずつ降りてくるから、そうしたら受け取る準備を開始する。
奥田民生の仕事部屋
──具体的にはどんなふうにしているんですか?
奥田:曲がわいてきたら「しーん」とした自室にこもって、「よし、やるか」という態勢になる。
頭の中を仕事モードに切り替えて「思うことをなんでもメロディにしよう」「なんでも歌詞にしよう」っていうモードにする。
そうしないと面白いフレーズは浮かんでこないし、浮かんでも俺をよけていく。
──曲作りをしているところを見てみたいです
奥田:定点カメラで俺の仕事モードを映したら、部屋で「じーっ」としてたり、「でれーっ」としているだけだから、「本当に仕事してるの?」と思われるかもしれないけど(たしかにしてないようにしか見えない)、でもそういうときの俺は結構真剣に仕事をしてるんだよね。
アイデアは〆切があってこそ
──〆切なんていつも追い立てられるばかりだから「なければいいのに」と思いませんか?
「〆切」っていうのは面倒くさいものではあるけど、仕事は〆切があってはじめてできるものだと俺は思うし、アイデアなんて〆切があってはじめてわくものですかね。
(本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。)