近見作業とは、手を伸ばした範囲内を視る作業をいいます。

 現代では勉強、読書、デスクワーク、スマホ操作、動画視聴……。「座って手元を視る作業」が日常の大半を占めるでしょう。

 つまり半径数十cmの圏内しか視ていないわけです。

 しかし人の目は、本来1~2m先にピントを合わせるようにできています。

 それを「調節安静位」と呼びます。

対象物と目の距離を
少しでも離せばよい

 これは旧石器時代や縄文時代を想像してみると、納得しやすいでしょう。

 人々が狩猟や採集を行っていた時代は、「1~2m先」を視ていたはずです。

 近くを視る瞬間といえば、調理や食事のとき、そしてたまに土器をつくるときくらいだったでしょう。

 当然、視力もよかったはず。

 ですから“理想論”をいうと、当時の暮らしに今の自分を寄せていけばいいのです。

 対象物と目の距離を、少しでも離せばよいのです。

 近見作業を行うとき。目からの一般的な距離は次のようになります。

・テレビ……1~2m
・パソコンの画面……50cm
・タブレット……30~40cm
・スマホ……20cm

 同じ内容を視るなら、距離が長くとれるものを選べばベストです。

 たとえば動画を視る場合、スマホよりはタブレット、可能であればテレビがいいということになります。

 この「画面が大きくなるにつれて、目との距離を離すことができる」という原則を、ぜひ覚えておいてください。正しく視ることで、人生は変わります。

「デジタル作業が人の目に不適な理由」の2つ目は、「本来、目は発光体を視るのに適していない」という点です。

 これは専門家でなくても「そりゃそうだろう」と思いますよね。

 いくら工夫が凝らされていたとしても、人間の目にとって光とはまぶしいものです。

 誰しも太陽を裸眼で長くは凝視し続けられないはず。

 でもデジタルデバイスの液晶画面なら、何時間でも飽きずに眺め続けてしまう……。

 それでは、目に悪影響が及んでも仕方がありません。

 たとえば発光体を視続けるとき。

 光っている状態のものをよく視ようとして、どんな人でもまばたきの回数が減ることがわかっています。