そのリスクを避けるためにも、稲盛さんは、自部門だけでなく会社全体のことも考えられる、利他的で数字に強いリーダーを育成することが大事であり、また独立採算部門が増えても、社員全員が人間として正しい判断をし、他部門への思いやりを忘れない利他的な考え方を、つまりフィロソフィを共有できるようにすべきだと強調していました。それがなければ、アメーバ経営を正常に機能させることはできないからです。

 そのため、JALではまず徹底したリーダー教育を行い、次にJALフィロソフィを作成し、それをベースに全社フィロソフィ教育を進めました。万全な準備をしたうえでアメーバ経営を導入したのです。その結果、アメーバ経営は最初から正常に機能し、全社員が自部門の採算向上に主体的にかかわるようになりました。つまり、全員参加経営が実現できるようになり、JALは短期間に高収益企業へと生まれ変わったのです。

数字を競うことで経営を「ゲーム化」
それが一体感を高め成長に繋がる

 当然ですが、アメーバ経営は、決して楽をして高収益を実現するような便利な経営システムではありません。緻密な管理会計の仕組みや分かりやすい採算表を作らなければなりません。また継続的なリーダーや社員教育も必要となります。このように導入には多くの準備が必要であり、その運用も簡単ではありません。