しかし、アメーバ経営を正常に機能させ、全員参加経営を実現させることができれば、その効果はJALが示しているように想像を超えたものになると私は確信しています。

 ところで、私が稲盛さんの秘書になった最初の頃、ある官僚の方が稲盛さんに「アメーバ経営とはなんですか?」と聞かれたことがありました。すると稲盛さんは、相手の方が経営には素人だと分かっていたので「ゲームみたいなものです」と答えました。

 みんなで毎日一生懸命仕事をし、その結果がどうなっているのか気になって仕方がない。翌朝、自部門だけでなく他部門の結果が発表されると、「昨日は隣のアメーバに負けてしまった」と全員で悔しがり、「今日は負けないぞ」と、みんなが意気込む。このように「ゲームのような感覚で社員1人1人が楽しみながら経営に参加するのがアメーバ経営です」と稲盛さんは答え、さらに「アメーバ組織は原始共同体のようなところもあり、一体感が極めて強くなるのです」とも説明していました。

 少人数で、「明日はどうしよう」「来月はどうしよう」と毎日のように喧々諤々の議論を重ね、実践していく。そのプロセスの中で、経営にとって最も大切な強い一体感が生まれるのです。私はその会話を横で聞きながら、アメーバ経営の1つの重要な側面が分かったような気がしました。