「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では著者である萩原礼紀氏のインタビュー記事をお届けします。
「高齢の親と外出するとき」に言ってはいけない言葉
――外出の際などに、高齢の親がまごつくのを見てイライラしてしまうケースは少なくないように思います。どのような対策があるのでしょうか。
萩原礼紀(以下、萩原):たしかによく聞くケースですね。「早く歩いてよ!」「待っている人もいるんだから急いでよ!」などがそれらに該当するでしょう。
ついこういった言葉をかけてしまうのもわかります。以前はテキパキと動けていた親の姿を子どもは知っているわけですから、そのときのイメージと今の親を重ねて「もっと早く動けるはず」と誰もが考えてしまいがちです。
しかし、高齢になると動作が遅くなったりしてしまうものです。まわりから見るとゆっくりしているようでも本人は急いでいるつもりだったりもします。
そのため、「早く歩いてよ!」、「待っている人もいるんだから急いでよ!」と伝えても、多少なりとも動作を速めることはできますが、同時に「焦り」や「不安」の気持ちも増幅させてしまいます。すると「転倒」や「忘れ物」などのトラブルが生じやすくなり、かえって事態をこじらせてしまうケースは少なくありません。
ですから、まずは冷静になって親を急かしてもいいことがないことを意識できるといいでしょう。
――そういった状況になったとき、理想の伝え方などあるのでしょうか。
萩原:伝え方は家族によって変わりますから、絶対的な正解を出すのはむずかしいですが、参考になる伝え方はあると考えています。
たとえば、「待っている人もいるんだから急いでよ!」という言葉、「大丈夫。焦らないでいいからね!」と伝えてみたらどうでしょうか。
少なからずこういった場合、親も自分が人を待たせていることに気がついています。そんななかで言葉でも急かされるとさらに余裕がなくなってしまいます。ですから、そんなときは「心の焦り」を取り除く言葉をかけられるといいでしょう。
まわりを待たせてしまっているなかで、誰か味方が言ってくれると感じられれば人の心には余裕が生まれます。皆さんも親を追い込みたいわけではないでしょうから、こういったアプローチができるといいコミュニケーションが取れるのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、正解は家族ごとに違うため、言葉の中身は皆さんに合うものを選んでいただければと思います。
――ありがとうございます。大変勉強になりました。