“荒波”に乗り出せ!「シップファイナンス」3つの類型とダイナミズム写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

船舶融資の位置付け方

 本連載第1回の記述のとおり、ストラクチャードファイナンスは返済原資の種類によってプロジェクトファイナンスやアセットファイナンス等に分類される。アセットファイナンスは、特定の資産およびそこから生じるキャッシュフローを返済原資とするものであり、その「特定の資産」には例えば不動産のほか、船舶、航空機、衛星、鉄道、車両等が含まれる(注1)。金融機関はそれぞれのアセット特性に応じて最適なファイナンス手法を検討する必要があるが、本稿では船舶を取り上げ、実務上の議論を紹介する。

 船舶の建造や購入に係る必要資金の供給を船舶金融(シップファイナンス)といい、なかでも商業銀行やリース会社等によって船舶抵当権を前提に資金供給する手法は「船舶融資」と呼ばれる。

 船舶融資の関係者は、船舶保有SPC(特別目的会社)のほか、それを取り囲むように存在している。例えばSPCのスポンサー(船主)や、輸送手段を必要としSPCに用船料を支払う用船者、造船所、船舶を運行し利用価値を維持するオペレーター(注2)、融資資金の出し手である金融機関等である。船舶保有SPCが借入人となる場合もあれば、船主がコーポレートローンとして調達することもあるが、いずれにせよアセットの取得を目的とするものである。

 一方、船舶融資を通時的に捉えると、船舶の建造から完工、用船、やがて役目を終えて解撤される船舶の一生に金融機関が併走するものである。つまり、建造を資金的に支え、その後、稼働により生じるキャッシュフローから返済を受けるプロジェクトファイナンスでもある。

 こうした複合的性格ゆえに、金融機関の視線は船舶の交換価値(船舶自体)と利用価値(用船料)の両者に注がれる。