もはや「サザエさん」の時代ではない

 1949年に朝日新聞で連載が開始された『サザエさん』に登場する波平さんの年齢は54歳、フネさんは52歳と、30歳くらいサバを読んでいるような設定ですが、それはさておき、1955年の平均寿命は男性が64歳、女性は68歳だったため、波平さんはあと10年で平均寿命に達します。

 そう考えると波平さんの怒鳴っている声がなんだか愛おしく感じてしまいますが、当時の退職年齢が55歳だったことを考えると、男性の場合、老後の人生は9年しかなかったのです。

 つまり、当時は23~55歳までの32年間で稼いだ富で、残りの9年間を生きればいいだけですから、(老後生活の毎月の赤字額を5万円と仮定した場合)老後までに540万円用意するだけでよかったのです。

 540万円は毎月1.4万円の積立貯金をするだけで達成可能ですが、退職金があれば積立貯金をする必要すらありません。

 しかし、厚生労働省が2023年に公表した「将来推計人口」によると、2070年の平均寿命は男性が86歳、女性は92歳となっていますから、仮に65歳で定年退職してしまうと、残りの人生は男性の場合で21年、女性の場合は27年と、かつての2倍以上の老後人生が待っていることになります。

 これは23~65歳までの42年間で稼いだ富で、(男性の場合)残りの21年間を生きなければならないわけですから、老後生活の毎月の赤字額を5万円と仮定すると、老後までに1260万円も用意しなければならない計算になります。

 1260万円は毎月2.5万円の積立貯金で達成可能ですが、退職金の減額やそもそも退職金のない企業も増えたことを考えると、波平さんの時代に比べてはるかにハードルが高くなっていると言えます。

 さらに、旅行や娯楽、豪華な食事、憧れだったマイホームや車など、人生のあらゆる楽しみを捨てて貯金をしても、インフレが長期にわたって高止まりした場合、その貯金の価値は大きく目減りする可能性だってあります。

 つまり、これまで当たり前だと思っていた価値観で生きていると、あなたの未来は取り返しのつかないことになりかねないのです。

(本稿は、『投資の教室 人生を変えるマネーマシンのつくり方』を抜粋、再構成したものです)

バフェット太郎(ばふぇっと・たろう)
投資に役立つ世界の重要な経済ニュースを厳選し、独自の視点からわかりやすく解説する、登録者数50万人のYouTubeチャンネル「バフェット太郎の投資チャンネル」管理人。冷徹な市場分析と鋭い舌鋒で、次々と予想を的中させる投資系インフルエンサー。Xフォロワー35万人。noteフォロワー1.4万人。
個人投資家としては、20代から投資を始め、数百冊の投資本をむさぼり読み、10年間さまざまな試行錯誤を積み重ね、米国株投資にたどり着く。ブロガー・YouTuber活動と並行して堅実な投資を続け、それから数年で数億円の金融資産を築く。
著書に『投資の教室 人生を変えるマネーマシンのつくり方』(ダイヤモンド社)、累計20万部のロングセラー『バカでも稼げる「米国株」高配当投資』(ぱる出版)がある。

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