今度は、彼女は彼らの話を聞いたのです。それは「夢を叶える話」だからです。先程の大人たちは、「夢を止める話」ばかりでした。悪気はありません。彼女がもしも失敗したら、かわいそうだから。もっと「ちゃんとしたほうが」うまくいくと思うから。そう思って「助言」しているのです。実際には助けていません。ただ、止めているだけなのです。そのような言葉に耳を貸す選択肢は、彼女にはありません。

日本には多すぎる
起業へのブロック

 親ブロック、嫁ブロック、と日本ではこんな言葉が起業用語になっています。英語に訳すと“Parental Block”“Spouse Block”になるでしょうか?

 もちろんアメリカでは起業に関するそのような言葉は存在しません。前者など、アダルトコンテンツ対策でも想像するのがオチでしょう。

 私の友人ですが、会社の中でどんどん出世していて、順風満帆。しかし、自身のライフワークとして、レガシーとして起業したい。それを家族にピッチした結果、「パパ、やめて」と子どもに止められたそうです。「いまの仕事で十分じゃない」と。日本には子どもブロックという用語も存在するようです。起業しようとすると、親が、パートナーが、子どもが止めてくる。用語として定着するくらい、多いのです。

 彼女は、夢を叶えるための話には、十分すぎるほど耳を貸すでしょう。それが「5年待て」という言葉でも、彼女が納得できる、夢を叶えるための手段だったら、それを選んだはずです。彼女が幸せだったことは、親ブロックが働かなかったこと、そのブロックを突破することにエネルギーを使わなくてもよかったことでしょう。

 優れた起業家は、人の話を聞かないし、聞くのです。

成功事例を真似したら
いい失敗にはならない

 とにかく、人は「事例」が好きです。かくいう私も好きです。しかし、一般的な好きとは少し違うと思います。

 多くの人は、「成功事例」が好きです。そして、それを真似ようとします。

 そして、多くの場合、失敗します。失敗は悪いことではないことは、ここまで読んでいただいた方にはおわかりだと思いますが、この失敗はあまり良くない失敗です。なぜなら「失敗の理由がよくわからなくなる」からです。