職場には「売れない営業マン」と「売れる営業マン」がいる。
この差は、一体、何だろう? どうしたら前者は後者に変わるのか?
今、ビジネスパーソンから経営者まで数多くの相談を受けている“悩み「解消」のスペシャリスト”、北の達人コーポレーション社長・木下勝寿氏の自己啓発書『「悩まない人」の考え方 ── 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』が話題となっている。
ここ20年以上悩んでいない」という著者を直撃。本稿では新年のスタートダッシュに役立つ「悩まない人の思考法」をお届けする(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

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家電量販店の値引き交渉のスペシャリストになる方法

 前回、「評価が高い人」は前もって相手の価値基準(価値観)を知り、それに合わせてこちらが変化する姿勢を持っている。逆に「評価が低い人」にはそれがない、という話をしました。

 私は相手の価値観を知るのが大事だと思っているため、普段から「取引相手の担当者の社内評価指標を知る」ことを意識しています。

 これはビジネスだけでなく、プライベートでも徹底しています。

 たとえば家電量販店に行ったとしましょう。
 そんなとき、私はこう考えます。

 量販店の店員には一定の販売ノルマが課されている。
 おそらくその指標は粗利ではなく売上金額だろう。

 なぜなら値引きの権限が、一般の店員は何%まで、それ以上の値引きは店長決裁が必要だろうからだ。

 おそらく店舗ごとにもギリギリ達成できるくらいに目標を設定しているはずで、勝負どころはおそらく土日=週末だろう。特に重要なのが「月の最終週の土日」。ここでの勝負に勝てれば、店舗全体も店員個人も同時に目標達成できる

 だからこそ、最終週の土日に雨が降ったら店員たちにとっては最悪です。
 逆に言うと、ここが最も値引き交渉がしやすいタイミングです。

 たとえば月初なら「これ以上の値引きは無理」と言われても、月の最終週の土日に「ここまで下げてくれたら買うんだけどな」と伝えれば、店員は店長決裁を仰いででも受け入れてくれる可能性があります。店員も月末の数字達成がかかっているからです。

 そして店長も店舗の数字を背負っているので「仕方ない」と受け入れてくれる可能性が高いのです。

凡人が最強営業マンになる思考アルゴリズムとは?

 ビジネスでも、取引先の人がどんな指標に基づいて動いているかを押さえておくと、うまくいきます。

 営業マンの中には、「これを買ったほうがいいですよ」とこちらのためを思って勧める良心的な人もいますが、自らの成績のためにゴリ押ししてくる場合もあります。

 そのときに、相手の評価指標を知っていると、この人の「本音」が見えてきます。おそらく月初と月末、期初と期末でその人の判断軸は変わり、態度に出てくるでしょう。

 毎回、月末になるとゴリ押ししてくる営業マンなら、「多分、数字の達成が相当厳しんだろうな」とこちらも冷静になれます。

 こういうとき、「タイミングによって意見が変わるのはズルい」「あなたは本当に顧客のこと思っているのか?」といった話はしないほうがいいです。

 むしろ私はそういうとき、
あなたは会社でどういう指標に基づいて評価されているのですか?
 をヒアリングするようにしています。

 そして、こちらに支障がない限り、相手に協力してあげるようにします。

「ひょっとして、今、目標数字の達成がかかっているのですか?」
 と少し歩み寄ってあげるのです。

 そして、

「本当は来月発注する予定だったけど、別に今月発注しても支障がないので今月発注しましょう」
 と言って相手の目標達成に協力してあげます。

 そうすると、またいい話を持ってきてくれたりするものです。

 大切なのは相手の価値観や行動の基準を知ることです。
 それを知るからこそ仲間になれたりします。

 初対面の好印象で相手をつかめる人は別ですが、それができない私のような凡人経営者は、とにかく相手の基準を知り、それに合わせることに集中すべきなのです。

 この思考アルゴリズムに変えるだけで、少しずつ現実は変わります。
 ぜひ試してみてください。

(本稿は『「悩まない人」の考え方──1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』の著者による書き下ろし記事です。)