「部屋でテレビ見てたほうがましや」

 では、施設のウリでもある充実したアクティビティーについてはどうか。

 私の手元には2023年の「アクティビティー予定表」がある。それによると、毎日何かしらのアクティビティーやイベントが行われていると記載されていた。

 例えば「ジャズダンス」「ビンゴ大会」「ドミノ倒し」など内容も多岐にわたっている。だが、小泉さんはこう話す。

「真理の丘は“自由”なホームだと宣伝していますが、自由なんてどこにあるんやという感じです。アクティビティーに行きたくない入居者さんがいたとします。好きな内容じゃなければ参加したくないのは当たり前ですよね。行きたくないと言う入居者さんでも、私たちが強引に連れてこないと怒られるんです」

 それだけではない。小泉さんは続ける。

「上司は、参加している入居者さんの様子を写真に撮れとうるさいんです。ネットに写真を載せて、やってますアピールをするためでしょう。ある入居者さんは、アクティビティーがつまらないから『部屋でテレビ見てたほうがましや』と、よく言ってましたよ」

 入居者の自由意志が尊重されているとは言い難い真理の丘。実は他にも、隠された問題が多く存在しているという。この翌日、私は真理の丘を見学することになっていた。

(本記事は、『ルポ 超高級老人ホーム』の内容を抜粋・再編集したものです)

甚野博則(じんの・ひろのり)
1973年生まれ。大学卒業後、大手電機メーカーや出版社などを経て2006年から『週刊文春』記者に。2017年の「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌などで社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆。近著に『実録ルポ 介護の裏』(文藝春秋)、『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)がある。