今、世界中で「ストイシズム」の教えが一気に広がっている。日本でも、幸せな金持ちとストイシズムの興味深い関係を描いた『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』が話題だ。著者は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がベストセラーとなり、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたスコット・ギャロウェイ。日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOがダブル推薦する全米ベストセラーより内容の一部を特別公開する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

【幸福研究に関する衝撃の事実】宝くじ高額当選者と下半身不随になった人のその後Photo: Adobe Stock

幸福研究に関する驚きの事実

1970年代、幸福について研究していた心理学者のドナルド・キャンベルとフィリップ・ブリックマンは、驚きの事実を発見した。

それは、
人生に大きな変化が起きても、人は新しい現実に適応するため、幸福度にはほとんど影響が生じない
ということだ。

彼らはある実験で、宝くじの高額当選者と下半身不随になった人たちを比較した。

意外にも、宝くじの当選者の幸福度は、対照群の被験者と同程度だった。
下半身不随になった人たちの幸福度は、対照群よりもやや低いだけだった。

さらに、これらのグループの中で、将来について最も楽観的な見通しを持っていたのは下半身不随になった人たちであることもわかった。

宝くじの当選者をグループや賞金額を変えて調査した後続の研究では、幸福度がはっきり上昇していることが確認されているが、それは多くの人が「突然大金を手に入れた人」に対して想像するような飛躍的な上昇ではない。

「ヘドニック・トレッドミル」とは?

キャンベルとブリックマンは、この研究結果が示す現象を、「ヘドニック・トレッドミル(快楽順応)」という言葉で表現している。

人は目標に向かってどれだけ前進しても、その状況にすぐに慣れてしまうため、トレッドミルで同じ場所を走り続けるように、幸福度も一定の水準に留まるというのだ(図表3)。

図表3図表3

『サピエンス全史』(河出書房新社)の著者である歴史家のユヴァル・ノア・ハラリは、
「歴史上の数少ない鉄則の1つは、贅沢品は新たな必需品になり、新たな義務を生じさせることである」
と述べている。

人は豊かになればなるほど、さらに贅沢な生活を求めようとする。
それはいたちごっこのように終わりがない。
同僚がブランド服を着ていると、自分の身なりがみすぼらしく思えてしまうことや(自宅で仕事をすればそのようなことがないので、被服費を抑えられるかもしれない)、よその家の子どもに負けないよう小学1年の子どものために家庭教師を雇うことまで(子どもがいると、収入レベルにかかわらず大きな出費を覚悟しなければならない)。

ある領域で生活レベルを少し高めるたびに、その他の領域をみすぼらしく感じてしまい、あらゆる領域の生活レベルを上げたくなる。

そうするたびに、さらに上のレベルが視野に入ってきて、生活レベルを上げるのは無理なことではないように思えてくる。

これは、単に少しだけいい生活用品に買い替えるというレベルの話に留まらない。

結婚して子どもができると、最高の医療を受け、できる限り健康的なものを食べ、安全な車に乗りたくなる。だが、もっといいくらしがしたいと思っても、収入のほうが先に増えていくことはめったにない。

(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)