「母娘の問題は、孫と祖母にまで広がっている」。母娘問題の第一人者、信田さよ子さんはこう語る。仕事と結婚の両立を強要する母、娘が対応できない孫の不登校に悩む祖母、問題は山積みだ。そもそもこのような問題を生み出した「皆婚社会」とは一体?信田さよ子さんの著書『母は不幸しか語らない』から一部を抜粋・再編集して解説する。
「皆婚社会の終わり」
今回、団塊世代の女性を切り口にしたのは、私自身がその年齢にあることに加えて、彼女たちを定点とすることで、団塊世代の女性とその娘(団塊ジュニア世代)との関係、さらには90歳超えも珍しくない長寿化する母との関係がどうなっているかを照射するためである。
書きすすめるにしたがって、団塊世代が歴史的にどれほど特異だったかを再認識することになった。私たちが「ふつう」「標準」ととらえていた家族像は現実とのずれが大きくなっているはずなのに、なぜか亡霊のように現在もなお生き続けて多くの人を縛っていることも見えてきた。
かつての経済大国の栄光を忘れることができず、あのころの勢いを取り戻すことは無理だという事実を認めることができず、「夢よもう一度」と号令をかけ続ける姿と、それはつながっているような気がする。標準家族に適合する世帯などほんの一部にすぎなくなっているにもかかわらず、自分たちはふつうで中流であると思い込もうとして日々を生きているのである。
誰もが結婚し、結婚したら必ず子どもが生まれるはずという思い込みは、中流幻想と標準家族像への信奉に通じる。そう考えると、今の時代に息子や娘が結婚しており、さらに孫が存在していることはかなり希少であると言わざるをえないだろう。