2021年に導入された「離婚クーリングオフ」とは?

 このリアリティ番組が大ヒットした背景には、もちろん「他人のプライバシーをのぞき見る」ことの面白さもあるだろう。だが、前述したように「家の恥を外にさらす」という忌避感が社会全体にある中で、なぜ彼らがそれをテレビ番組上で披露するかということへの関心も高い。

 だが、離婚はそれほどまでに忌避されつつ、実のところ今の中国社会では身近な問題の一つとなっている。

 今年9月に中国民政部が発表した2023年度統計の報告は、「婚姻率が5.4パーミルに!※ここ10年来で、初めて減少傾向から増加に転じた」と大々的に報道されたが、その一方で昨年離婚した夫婦は約360万カップル、離婚率は2.26パーミル※となった。2022年度の同報告によると、離婚件数は約288万カップルだったから、実は離婚件数は1年間でなんと25%あまりも増えた計算になる。

 これは2021年に「離婚クーリングオフ」システムが導入された結果による数字だ。この制度は離婚申請をした日から30日間冷静期間を置くというもので、その間にどちらか一方が反対すればその離婚申請を撤回できることになっている。

 さらにその30日間、当事者たちが暮らす地域の民生委員のような役割の人たちが、入れ替わり立ち替わり申請者の説得を続けるのだ。今後の収入をどうするのだとか、子供の将来を考えろなどと、精神的なプレッシャーをかけて離婚を思いとどまらせる。この制度はまた、夫婦のどちらか一方が納得しなければ申請の取り下げることができるとされているのも、「ミソ」だと言われている。

 今や出生率の低下スピードが日本を上回ると言われる中国にとって、子どもを生むことを前提にした婚姻率の増加とともに、離婚率の引き下げもまた、民生担当者に大きなノルマとしてのしかかっているのだ。

 このシステム導入の結果、コロナ前の2019年には470万件を突破して過去最高となった離婚件数は、2021年にはコロナウィルスの大流行もあり、283万件台にまで落ちた。それでも離婚件数は前述した通り、2022年、2023年と顕著な増加傾向にある。

※婚姻率は人口1000人あたりの婚姻件数、離婚率は人口1000人あたりの離婚件数。1パーミルは1000分の1。