楽しい想像が広がる室内空間
走りは静かで上質、しかもパワフル
対面したN-VAN e:は、楽しい雰囲気にあふれていた。ガソリン仕様との違いはほとんどないが、シンプルでチャーミングなスタイリングは魅力たっぷり。しかもボクシー形状はサイズ以上の存在感を放つ。取材会場にはフラワーショップ仕様に仕上げたモデルが展示されていたが、アイデアしだいで発展性は無限大だと実感した。後席だけでなく、助手席も床下に収納したフリースペースは広大そのもの。なんでも積めてアレンジ自在だ。バイクやMTBはもちろん、お気に入りの遊びの道具を搭載してのツーリングは自由自在。
個人的には、純正opで用意されているデスクと椅子を装着し、自然豊かな場所でワーキングホリデーを楽しむのも悪くないと思った。このクルマならPCなどの電気製品が自在に使え、コーヒーメーカーでおいしい一杯を淹れることもできる。とにかく自由な発想が生まれる楽しい空間の持ち主だ。
ちなみに運転席は新型N-BOXのシートフレームを採用した大型サイズで快適性抜群。助手席と後席は基本的に補助席だが、助手席はガソリン仕様に対して腰の落ち着きを高めたリファイン版になっている。2時間ほどのドライブならOKな印象だった。
魅力は、その走りの余裕だ。システムは64㎰/162Nmのモーター(L4/FUN)とバッテリー容量29.6kWhの薄型IPUで構成。足回りはタイヤを13インチ化してエアボリュームを増やすとともに、サスペンションを最適チューン。ブレーキサイズの大径化と電動サーボの採用で、航続距離拡大とブレーキフィールを両立している。
ボタン式走行セレクターでDをセレクトし、アクセルON。N-VANe:はスムーズにそして力強くスタートした。通常領域ではアクセル操作にリニアに応え、ちょうどいい加速を披露。一方、アクセルをワイドオープンするとBEVらしい力強さが味わえる。そのセッティングは絶妙。まさにドライバーの意のままだ。開発陣の「運転しやすく、疲れない、安心なクルマを目指した」という説明どおりである。つねに静粛性が高いこともあり、走りの余裕と上質感はKカーを感じさせない。
驚いたのは、走りの安定性だ。ワインディング路をちょっぴりハイペースで走っても、実に気持ちがいい。BEV化による低重心化と入念なサスチューンの成果だろう。まるでトレッドが大幅に広がったかのような印象を受けた。ブレーキフィールもしっかりとしており信頼性は抜群。そのうえ回生効率は抜群に優れているという。乗り心地も快適だった。
N-VAN e:は、BEVが楽しい生活をサポートする存在であることを、改めて実感させてくれた。このクルマを輝かせるのはオーナーのアイデア。世界に誇る日本発のBEVである。
(CAR and DRIVER編集部 報告/横田宏近 写真/横田康志朗)