しかし、それらはいずれもヒューマノイドではない。溶接作業専用のアームがついていたり、資材搬入のための車輪がついていたりと、人間とは似ても似つかない、現場作業に特化されたロボットだ。
現場仕事をさせるのに
ヒト型は非効率では?
「現場仕事をさせるのに、ヒト型である理由はなんだろう。そもそも、ヒト型にこだわる必要があるのだろうか?ヒューマノイドはもう、SFやアニメの世界のなかだけのノスタルジーなのでは?」
そんな疑問をぶつけるべく、探検隊は、動画に登場するヒューマノイドの開発者を訪ねてみることにした。
研究室を訪ねると、そこではまさに、あのヒューマノイドがYouTubeの動画と同じデモをおこなっている真っ最中だった。石膏ボードを両手に抱えてゆっくりと歩む、黒々としたボディが目に飛び込んでくる。
身長182cm、とやや大柄なヒトサイズの“彼”の名は「HRP-5P」。略称は「5P」(ファイブピー)だ。
産総研の前身である通産省工業技術院の時代から、20年かけて研究されてきたヒューマノイド「HRP」シリーズの最新バージョンである。
開発メンバーの1人として、HRP-5Pの仕事ぶりを見つめているのが、産業技術総合研究所・知能システム研究部門ヒューマノイド研究グループ主任研究員の阪口健さんだ。その厳しい目つきにたじろぎながら、われわれはおそるおそる疑問をぶつけてみた。
――仕事の効率を考えたら、ヒト型ではないほうがよくないですか?
「よく言われますよ。いまやっていた、石膏ボードをビス留めする仕事をするのに、5Pは7分もかかっていますからね」
意外にも阪口さんは、笑って答えてくれた。しかしそのあと、阪口さんは真顔になってこう続けた。
「だけど、僕らがめざしているのは、建築現場などで特定の仕事だけをスピーディにこなすようなロボットではありません。実社会に入って、人と一緒に働いたり、人を助けたりできるロボットなんです。社会のインフラや道具のすべてが、人の身体を前提にデザインされていることを考えれば、そこに入っていきやすいロボットも、必然的にヒト型になるわけです」
ならば、阪口さんたちのヒューマノイドは実際にいま、どこまで人間に近づいているのだろう。隊員はさらに質問を続けた。