地中の温度は年間を通してほぼ一定
縄文人も利用して住居を作った

――はあ……。そんな生ぬるい温度で、なんか役に立つんですか?

「発電には利用できません。ですが、バカにしてはいけません。じつは縄文人も、地中熱を利用していたことがわかっているんです」

――じょ、縄文人が地中熱を?

「彼らが住んでいた竪穴住居の遺跡は全国で発見されていますが、平均して深さ50cmほどの穴が掘られていたことがわかっています。なぜ彼らはそんなことをしたのか」

図4-1 竪穴住居同書より転載 拡大画像表示

 内田さんは少しためてから、隊長とK田隊員の目を見ながら続けた。

「掘り下げた地面は、夏は涼しく、冬は温かいことを知っていたためと考えられています。地上の気温は季節によって変わっても、地中の温度は年間を通してほぼ一定だからです。竪穴住居の穴は、寒冷な北へ行くほど深くなる傾向があることもわかっています」

――へー、なるほど。でも、どうして地中の温度はあまり変わらないのですか?

「これを見てください」

 内田さんはバッグからノートPCを取り出して、【地下温度の季節変動】と題されたグラフを示した。四季ごとの地中の温度が、色分けされた線で示されている。

図4-2 地下温度の季節変動同書より転載 拡大画像表示

室外機で熱を集めるには
外気より地中が効率的

「まず、上のグラフでは、深さ0mの地表から出ている線はどれも、地下に向かって滑らかなカーブを描いています」