「ところが、深さ10m以下になると、4本の線がすべて平均気温15度のところで一つに重なっていますね。これは、この深さでは年間を通して、このくらいの温度だという意味です。だから地中では、冬は気温より暖かく、夏は気温より涼しい。下のグラフのように、この気温との温度差をメリットと考えれば、私たちはこれをもっと賢く利用することができるのです。そのためのしくみが、みなさんに知っていただきたい地中熱利用システムなんです」
内田さんはオフィスの壁にあるエアコンを指さして言った。
「従来のエアコンは、部屋の中にある室内機と、戸外にある室外機からできていて、それぞれの中にある熱交換器どうしがパイプでつながれています。このパイプの中で冷媒ガスにのせた熱を循環させて、冬は戸外から熱を室内に取り込み、夏は室内から戸外へ熱を排出しているわけです。ところが地中熱利用システムでは、エアコンでいえば室外機の熱交換器にあたるものを、地中に埋めてしまいます。地中に埋める部分を『地中熱交換器』と呼びます」
――熱交換器を土の中に埋めると、何かいいことがあるんですか?
「大ありです。たとえば冬にエアコンが、室内に25度の温風を出すには、戸外から室外機で熱を集めるわけですが、0度の外気から集めるのと、15度の地中から集めるのとでは、どちらがかかる負荷が大きいでしょうか。あるいは、夏に35度の外気に熱を捨てるのと、15度の地中に排熱するのとでは、どうですか。地中のほうが負荷はずっと少なくてすむことはおわかりいただけるでしょう」
内田さんはPCの画面を切り替えながら言った。
「つまり、エネルギー消費が少なくてすむんです。実例をご覧に入れましょう」
画面上に、【地中熱利用システムの省エネ・CO2削減効果】と題された、いくつかの棒グラフが現れた。