自然災害から犯罪まで、子どもは日々、あらゆる危険に遭遇する。そうした危険から身を守る方法を紹介した書籍が池上彰総監修『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)だ。
何が起こるかわからない人生、万一への備えが運命を左右することもある。本書は、すべての親子にとって必読の一冊だ。
今回は『いのちをまもる図鑑』の刊行を記念して、著者の滝乃みわこ氏とイラストエッセイスト犬山紙子氏の対談を行った。犬山紙子氏は『女の子が生まれたこと、後悔してほしくないから』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を発刊したばかり。ともに「子どもを守る」ことを徹底的に考え抜いて書かれた両書の著者に、その重要性について語り尽くしてもらった。
(構成/ダイヤモンド社・金井弓子)

【命を守る】「男の子は狙われない」という大間違い…加害者の歪んだ思考とは?Photo: Adobe Stock

男の子も性犯罪の被害に遭う現実

滝乃みわこ(以下、滝乃):『いのちをまもる図鑑』の制作のなかで、専門家の先生にお話を伺った際に驚いたのが「性犯罪のターゲットは女の子だけではない」ときの理由です。本当は女の子を狙いたかったけれど、警戒されるから「男の子でいいか」と考える加害者が意外といるという話を聞いて、本当に衝撃を受けました。

犬山紙子(以下、犬山):「消去法で男の子」みたいな考え方って、恐ろしいですね。

『いのちをまもる図鑑』マンガページ『いのちをまもる図鑑』本文より マンガ:横山了一
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滝乃:これをきちんと書かないと、性犯罪の話は「女の子だけが気をつければいい」という認識になりがちですよね。それを避けたくて、この本では「男の子の被害」についても強調しています。女の子は性犯罪への注意を耳にタコができるくらい聞かされていると思いますが、男の子は「自分が狙われることなんてない」と他人事に感じてしまう。だから、「加害者は男女問わず“子ども”を狙うんだよ」と漫画に描いていただくことで、男の子にも女の子にも「自分事」と思ってもらえるようにしました。

犬山:本当にそうですよね。加害者は「弱い者を狙う卑怯者」だということを、きちんと子どもたちに教える必要がありますね。

「男女」じゃなく「犯罪者とそれ以外」

滝乃:そうなんです。「女=被害者」「男=加害者」というふうに単純化してしまうと、男女間の憎しみや対立を生んでしまうので、この本では「犯罪者とそれ以外」という構図にフォーカスしています。被害者は決して悪くないし、加害者にはならないように、自分も注意しようという視点を持ってもらえたら嬉しいですね。

犬山:イラストも男女両方を取り入れているんですよね。それがまた素晴らしいですね。

「同意」の重要性を教えてくれる児童書は貴重

犬山:「思いこみで性犯罪をしないために」という項目も画期的です。「同意」を取るって本当に大事なことなので。「同意のない壁ドンはダメ」というのは、わかっていない子が多いんじゃないかな。

滝乃:同意を軽視する価値観は、AVやエロ漫画などの影響も大きいと思うんです。AVやエロ漫画では「嫌がっているように見えるけど、最終的にはうまくいく」というストーリーがよくありますが、その影響をうけた性犯罪者は逮捕されても「相手も喜ぶと思った」と言い訳をする人が多いんですよね。表現の自由は大事ですが、現実とフィクションは明確に線引きをして伝えないといけないと感じています。