子どもには、違和感を見過ごさない人になってほしい

犬山:わたしの場合、娘がいるので特にそう思うんですけど、将来パートナーがモラハラだったり、尊重してくれなかったりする人だった場合に「これっておかしいな」と気づける力を持ってほしいんです。そのためにも、「同意とは何か」といったことをしっかり知ることが大事で……。そういうセンサーを育ててほしいんですよね。

滝乃:知識を得てセンサーが働くようになると、きっと「それってダメなんじゃないの?」ってちゃんと言えるようになると思いますね。

犬山:そうなんです。知らないままだと「こういうものなのかな」と受け入れてしまう可能性があるけど、「この人、わたしを大事にしてくれてないのかな?」とか「もしかして無知なのかな?」って気づけるようになってほしい。そういう意味でも、『いのちをまもる図鑑』は本棚に置いておく価値があると思います。

ネットリテラシーの知識は必須教養

犬山:「闇バイト」の話に触れているのは、めちゃくちゃタイムリーですね。今や子どもたちにも影響が出てきていますから。

滝乃:2023年におきた銀座の強盗4人が闇バイトで集められた16~19歳だったので、今後こういう事件が増えるかも思って警察庁に取材したのですが、まさかこんなに社会現象になるとは…ですね。

犬山:「闇バイト」という言葉の響きがポップすぎるのも問題ですよね。どなたかが言ってましたが「使い捨て犯罪者」みたいな、リアルな言葉に変えた方が危険性を伝えやすいんじゃないかと思います。

滝乃:たしかに。「珍走団」と同じように、もっとダサくてネガティブなイメージに変えていくのは効果がありそうですね。子どもは「ダサい」のは絶対に嫌ですから。

犬山:ネットのリテラシーは今や必須知識ですよね。子どもって、親がびっくりするような発想をするんですよ。わたしは『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』という本の取材で「仲良しの証として友達にパスワードを教えてしまった」という事例を聞いて、たまげました。

滝乃:言われてみれば、パスワードが何のためにあるのか、その重要性をきちんとレクチャーする場面って、意外とないですよね。大人でも設定をなんとなく済ませてしまう人も多いですし。

一対一のやりとりが生む信頼の盲点

滝乃:子どもは、自分と一対一で連絡を取っている人に対して「この人はいい人だ」と思い込んでしまうんですよね。「ネット上には危険な人がいる」ことを知識として理解していても、自分とやりとりしている相手を危険な人と思うことができず、引っかかってしまう。

犬山:それが闇バイトや性的グルーミングなど、すべての問題の根源になっていると思います。

滝乃:大人でも引っかかる人は引っかかりますし、20歳を過ぎていても同じなんですよね。それを考えると、子どもたちが被害に遭う可能性はもっと高いですよね。

犬山:今後こういった犯罪はもっと増えていくんじゃないかと思います。だからこそ、警察に相談するように啓発活動が進められています。

※本稿は、『いのちをまもる図鑑』『女の子が生まれたこと、後悔してほしくないから』についての書き下ろし対談記事です。