推定する野球ボールは「いつ、誰が、どうしている時に浮いている野球ボール」なのかを明確にしましょう。

 以下が解答例です。

推定対象を明確に定める

 まず、「今、この瞬間に浮いている野球ボール」について、次のように具体化したうえで、推定を始めたいと思います。

【コンサル就活で必須】フェルミ推定で鍛える「論理的思考力」と「説明力」推定対象を具体的に定める

「浮いている野球ボールの数」を分解する

 浮いている野球ボールの数は、大まかに「野球をしている人数」と「1人が浮かせている野球ボールの数」に分解できます。

 浮いている野球ボールの数
 =(A)野球ボールを使用している人数×(B)1人が浮かせている野球ボールの数

 ここで、(A)野球をしている人数に関しては、①プロ野球選手の人数、②野球の部活動に所属する学生の人数、③その他の一般人の人数の3つに分類できます。

 しかし、プロ野球選手の人数は学生や一般人に比べて非常に少なく、全体の数字に大きく影響しないものと考え、今回は考慮しないことにします。

 また、(B)1人が浮かせている野球ボールの数に関しては、野球ボールが使われているシチュエーションによって異なることが想定されます。

 具体的には、①試合、②練習、③公園でのキャッチボールやバッティングセンターなどでの娯楽の3つに分類できます。

 学生は平日の夕方にはほとんど試合をしないことが想定され、一般人も試合の数自体が少ないことから、試合中に浮いているボールの数は推定しないことにしました。

 同様に、一般人が平日の夕方に練習することもほとんどないため、推定しないこととします。

 また、娯楽については、平日の夕方にキャッチボールをしている人は少ないと考え、今回はバッティングセンターで浮いている野球ボールに絞って推定したいと思います。

 以上をまとめると、今回の問題は「野球を練習している学生」「バッティングセンターなどで遊んでいる学生や一般人」に場合分けして推定するとよいと考えました。

【コンサル就活で必須】フェルミ推定で鍛える「論理的思考力」と「説明力」場合分けをする

「練習中の学生」と「遊び中の学生と一般人」に分けて推定を行う

(1)練習中の学生

 日本には小学生が600万人、中高生が600万人、大学生が200万人、合計1400万人の学生がいるとします。

 ここで、小学生のうち運動系クラブに入る生徒の割合を4割とし、運動系クラブの中で野球を選ぶ割合を3割とすると、小学生の野球人口は

 600万人×0.4×0.3=72万人

 となります。

 また、中高生はクラブに所属する人も増えるため、運動系クラブに入る生徒の割合を5割とします。

 クラブの選択肢が増えることを想定して、野球を選ぶ割合は2割とします。このとき中高生の野球人口は

 600万人×0.5×0.2=60万人

 となります。

 大学生はアルバイトの選択肢も増えるので、運動系クラブに入る学生の割合を1割とし、野球を選ぶ割合は変わらず2割とします。

 このとき、大学生の野球人口は

 200万人×0.1×0.2=4万人

 となります。以上より、学生の野球人口は

 小学生72万人+中高生60万人+大学生4万人=136万人

 と推定できます。

 このうち、ある平日の夕方に練習している学生の割合を半分と仮定すると、約70万人が野球の練習中であると推定できます。

 次に、1人が浮かせている野球ボールの数を求めます。練習時間は平均3時間と想定します。そのうち

 ・1時間はストレッチや走り込みでボールを使わない
 ・1時間は2人で1個のボールを使っている
 ・1時間は試合形式で浮いているボールの数は無視できる

 と仮定します。

 2人で1個のボールを使用する場面はキャッチボールなどが考えられますが、今回の想定では、ボールは10秒間で1秒だけ浮いていると仮定します。

 よって、1人が浮かせている野球ボールの数を次のような式で推定できます。

 1人が浮かせているボールの数
 =1/3(ボールを使う練習の割合)×1/2(使用するボールの数/人)×1/10(ボールが浮いている割合)
 =1/60(浮かせているボールの数/人)

 以上より、学生が練習している場面において浮いている野球ボールの数は

 70万(人)×1/60(浮かせているボールの数/人)≒1万1700個

 と推定できます。

(2)遊び中の学生と一般人

 ここでは、平日の夕方に娯楽として野球ボールを使う場面のほとんどは、バッティングセンターでのプレイであると仮定し、バッティングセンターの施設数と利用率から浮いている野球ボールの数を推定します。

 私の地元は人口約10万人の市でしたが、市内にバッティングセンターは1つしかありませんでした。

 これが全国でも平均的な割合だと仮定すると、日本の人口はおよそ1億2000万人なので、バッティングセンターは1200施設あると推計できます。

 さらに、1施設あたり10人まで遊戯可能で、平日夕方の稼働率を5割と仮定して、遊んでいる人数を次のように推定します。

 1200(施設)×10(人/施設)×0.5(稼働率)=6000(人)

 1人が浮かせているボールの数は、1人で1個のボールを使い、10秒に1秒浮いているとして、次のように推定します。

 1(使用するボールの数/人)×1/10(ボールが浮いている割合)
 =1/10(浮かせているボールの数/人)

 以上より、娯楽として野球ボールを使う場面で浮いている野球ボールの数は

 6000(人)×1/10(浮かせている数/人)=600個

 よって、「今、この瞬間に浮いている野球ボールの数」は、

 1万1700+600≒1万2000(個)

 と求まりました。以上となります。ありがとうございました。

回答の補足

 今回は、「(1)練習中の学生」と「(2)遊び中の学生と一般人」が浮かせているボールの数が、全体のうちの大きな割合を占めると想定して推定しましたが、結果的に(2)の割合は(1)と比べて非常に小さくなりました。

 推定開始時に除外できるのがベストですが、本番ではこのような状況も起こり得ます。計算後にほかの数字と横並びにして比較しないと気づかない場合もありますが、状況に応じて推定の軌道修正や面接官への説明ができるようにしましょう。

面接官とのQ&A

――休日を前提とした場合、浮いている野球ボールの数はどうなると思いますか?

 バッティングセンターの利用率が増えることが考えられますが、それ以上に、今回ボリュームとして大きかった練習中の学生の数が試合などで減り、全体として浮いているボールの数は少なくなると考えます。

 具体的には、練習中の学生のうち1割が試合をしていると仮定すると、浮いている数が1200個減ると計算できます。

――「浮いているボールの数」について、ほかの球技と比べた場合、野球にはどのような特徴がありますか?

 重要な観点は①競技人口、②1つのボールを扱う人数、③ボールを浮かせている確率の3つだと思います。

 野球の特徴として①は他の球技よりも多いと考えられます。②については、たとえばテニスよりは多く、サッカーよりは少ないと考えられます。③については、ボーリングより大きく、バレーボールより小さいと考えます。

――問題を変更し、「野球ボールの年間購入数を推定してください」と言われたら、どのように推定しますか?

 今回のアプローチを応用し、野球ボールが購入される場面を、①プロ野球、②学生の部活動、③バッティングセンターに分けて推定するのがよいと考えます。

 ①②は1団体あたりの所有数、③は1施設あたりの所有数を想定し、それぞれの買い替え期間を設定して購入数を推定できると考えます。