たとえば、言語発達と問題行動には双方向の関係があるという長期的な研究があります(*3)。
言葉はコミュニケーションに使うだけではなく、言葉を通して自分をコントロールするような機能もあるため、言葉の発達がゆっくりな子どもはうまく自分を抑えられずに攻撃行動に出やすい可能性があります。そして、言葉の発達がゆっくりな男児は、女児に比べて年齢とともに攻撃行動が目立つようになることも指摘されています。
このように、言葉の発達と攻撃行動はある程度関連していると言えそうです。言葉で気持ちを適切に表現できないストレスが、攻撃行動の一因となっている可能性があるのです。
ただし、信頼できる研究がそれほど多くはないですし、そもそも言葉の発達の遅れが必ずしも攻撃性に直接つながるわけではありません。他の環境要因なども複雑に絡んでいると思われます。
*3 Girard, L. C., Pingault, J. B., Falissard, B., Boivin, M., Di-onne, G., & Tremblay, R. E. (2014). Physical aggression and language ability from 17 to 72 months: Cross-lagged ef-fects in a population sample. PloS One, 9 (11), e112185.
子どもの攻撃性を
促進する親がいる
なぜ男児のほうが攻撃的なのか。子どもの攻撃性になぜ性差が生まれるのかという点について考えてみたいと思います。
この点に関しては、やはり親のかかわり方や育て方が大事になってきます。
親のかかわり方と子どもの攻撃性について、オランダでなされている長期的な研究では、親のかかわり方や親のジェンダーについての考え方によって、子どもの攻撃性の性差が生まれる可能性を検討しています(*4)。
親のかかわり方の中でも、子どもの攻撃性に影響するのは、言葉を使ってではなく、身体的に子どもを管理しようとする接し方です。たとえば、親が子どもを掴んだり、押したり、叩いたりなどのかかわり方をすると、子どもの攻撃性が高まると考えられています。これは、親が身体的に子どもを管理する様子から、子どもは身体的に他者を管理することを学ぶため、身体的な攻撃性が高まると考えられています。
*4 Endendijk, J. J., Groeneveld, M. G., van der Pol, L. D., van Berkel, S. R., Hallers-Haalboom, E. T.,Bakermans-Kranenburg, M. J., & Mesman, J. (2017). Gender differ-ences in child aggression: Relations with gender-differentiated parenting and parents’ gender-role stereo-types. Child Development, 88 (1),299-316.