実際に、親は男児に対して、より多く身体的管理をすることを示す証拠が報告されています。親が男児を身体的に管理し、その影響を受けて男児の攻撃性が高まるということです。

 ただ、皮肉なことに、親が身体的に管理をすることで子どもの攻撃性が高まると、そのために親はますます子どもを管理できなくなるということも示されています。悪循環というわけです。

 さらに、親のジェンダーに対する考え方も大事だと考えられています。親のジェンダーについての考え方とは、親が性役割についての固定観念を持っているかどうかということです。

親のジェンダー観が
子どもに影響を与える

 たとえば、ある親は、女性は仕事で大きな達成をするよりも、家庭を大事にするべきだと考えているかもしれません。これは、性役割についての固定観念を持っているということになります。逆に、別の親は、女性であれ、男性であれ、仕事の達成も家庭での役割も、同じくらい大事だと考えるでしょう。これは、固定観念を比較的持っていないということになります。

 オランダの研究では、この2つの要因、つまり、親のかかわり方とジェンダーに対する考え方の両方が、子どもの攻撃性に影響を与えることが示されています。具体的には、性役割に対する固定観念が強い父親は、女児よりも男児に身体的管理(押したり掴んだり)を行うことが示されています。また、母親は、固定観念にかかわらず、男児に対して身体的管理を行うようです。

 さらに、父親に関しては、性役割に対する固定観念が強いと、女児よりも男児に身体的管理を行い、その結果として男児の1年後の攻撃性が高まることも示されています。つまり、「男の子は男の子らしく」のような固定観念を持つ父親は、男児に対して躾と称した身体的な管理を行いがちであり、その結果として、男児の攻撃性が高まりやすいということです。

子育ての手段として
体罰は絶対に禁止

 女児に対してはそのようなかかわり方をしないため、女児の攻撃性は高まりにくく、結果として攻撃性の性差が生まれるということになります。