倒産会社だから当然とはいえ、JAL社員の給与は3割~2割ほども減ってしまった。そのことが働く意欲に影響しないのだろうか。伊丹空港で働く西谷の月給もまた10万円台の前半だが、働きがいはおカネだけではないと言う。
西谷 (お給料が低くて)何のために私は働いているんやろって思ったときもありました。
でもやっぱり仕事をしていく上で、お客さまとの出会いであったり、同じ働く仲間が支えになりました。特別早期退職の募集もあり、悩む人たちもいっぱいいましたけれど、JALが好きで残った仲間ばっかりなので。
飛行機が小さいと、どうしてもお客さまにご面倒をおかけすることがあります。
例えば大きな飛行機だったら、車いすをご利用のお客さまでも、そのまま飛行機に乗っていただけますが、小さな飛行機の場合は、車いすから自動車に乗り換えて、また車いすに乗り換えていただいて、機内にご案内しなくてはいけません。
それなのにお客さまからは「本当に助かったよ、また行けるわ」とか「これなら一人で遠くに行ける」、というお言葉をいただいたり、「飛行機に乗るために、ここまでしてもらってありがとう」と、逆にお礼を言われることがあるんです……。
人は何のために働くのか。食べるために、生きていくために、金銭を獲得するために、であることは否定できない。だが、金銭だけではないことも確かだ。若い世代の人たちは、お給料が多くないなら、ないなりの楽しみ方さえ心得ている。
それより何より、乗客からの「ありがとう」、仲間同士の「ありがとう」が、彼女たちの働く意志を支えているのだ。
このJALの意識改革はグループ会社の社員一人ひとりの「心を変え」つつある。稲盛がJAL社員の心に「火」をつけ、社員がそれこそ「地味な努力」を積み重ねてきたからこそJALの今日がある。
次回はJALのこれからついて社長の植木に訊く。
(次回は5月21日更新予定です。)
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