自信満々に見える、収入が多い、友人が多くて社交的、周囲に必要とされる……。このような要素が自己肯定感に関係することもありますが、本質的には異なります。

 自信満々に見えても虚勢を張っている場合もあれば、すべてを兼ね備えているような人でも「自分はダメだ」と思い込み、もがき苦しんでいることもあります。

 本質的に自己肯定感が高いとは、「どんなときでも、自分は自分でいい」と思えることです。

 自己肯定感が低い人の潜在意識に共通するのは、強い「must」です。普通ではまず到達できないような「must」の基準があると、どんなにがんばって成長しても「こんな程度ではまだまだダメだ」と、自分を認めようとしません。

 そこまで完璧主義ではなくても、状況によって自己否定に陥る場合もあります。古田さんの例では、健康なときは「must」の基準(家事をきちんとこなす)を満たしていたので自分を肯定できました。ところが、病気によって基準をクリアできなくなると、自分を許せなくなったのです。

 自己肯定感が低いままだと、生きづらくなります。その背景には「must」の存在が強くあり、「must」が生まれるプロセスの多くには親の教育方針が関与しています。

 たとえば、「一流の学校を出なければダメだ」という親の価値観を引きずり、「学歴が低い自分はダメだ」という自己否定と長く(ときに一生)闘うことを余儀なくされるなどです。

 では、自己肯定感の低さは親の責任なのかという疑問が生じますが、これについてはさまざまな見方ができます。子供をコントロールし、強い負の影響を与える親は「毒親」と呼ばれますが、その表現には賛否両論あり、多様な意見があることが見てとれます。

 そのひとつは、自分の在り方を省みるためだというものです。親の強い支配に苦しんでいる人にとっては、支配者に「毒親」と強烈にネガティブなラベリング(思い込み、決めつけ)をすることで親と自分を切り離し、自由になれると思えるのかもしれません。