「下痢や便秘が止まらない『過敏性腸症候群』とは何か?」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
「過敏性腸症候群(IBS)」とは?
「お腹が痛い」というと、つい昨日の晩ごはんや冷たい飲み物を思い浮かべてしまいませんか?
でも、実はその原因、あなたの心にあるかもしれません。
「お腹が痛くなってベットから起きられない」
「仕事に行こうとするとお腹が痛くなる」
「職場でずっとトイレにこもってしまう」……
このようなストレスや不安によって腸が暴走してしまう病気、それが「過敏性腸症候群(IBS)」です。
この記事では、IBSの不思議なメカニズムと、腸との上手な付き合い方をご紹介します。
腸が「わがまま」になる病気
IBSとは、腸に明らかな異常が見つからないのに、腹痛や便通異常が続く病気です。
ある日突然、腸が「ストレスなんで今日は休みます!」と勝手にストライキを始めるようなもの。
たとえば、朝の通勤途中に急にトイレを探す羽目になったり、大事な会議中にお腹がゴロゴロ騒ぎ出したりするのです。
特徴的な症状として、
● トイレに駆け込むほどの急な腹痛
● 下痢と便秘を交互に繰り返す不可解なリズム
● なんだかすっきりしない、お腹がもやもやした感覚
このような症状がつづくことで、お腹の調子の悪さが余計にストレスを悪化させるという悪循環になって「なぜ自分だけこんな目に?」と感じる方も少なくありません。
心と腸の不思議な関係
私たちの体の中で、心と腸はまるで親友のように密接につながっていることが明らかになっています。
そのため、心の健康が腸に影響を与え、逆に腸の不調が気分を悪くすることもあるのです。
この関係を「脳腸相関」と呼びます。
たとえば、緊張するとお腹が痛くなることはありませんか?
これは、脳から腸に「危険だ!」という信号が送られ、腸が必要以上に反応してしまうからです。
さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンが腸の働きを乱すことで、IBSの症状が悪化することも知られています。
また、腸内細菌のバランスも乱れることもわかっていて、ストレスがかかると、腸内の善玉菌が減少し、悪玉菌が増える傾向があります。
このように、ストレスによって腸内環境は不安定になってしまい、症状を悪化させる原因になるのです。
お腹と良い関係でいるために
では、どうすれば腸との仲を取り戻せるのでしょうか?
まずは、食生活を見直してみましょう。
腸内環境を整えるには、発酵食品や食物繊維が効果的です。ヨーグルトや納豆、さらにはキムチなど、腸が喜ぶ食べ物を積極的に取り入れてみてください。
また、なによりもストレスを溜め込まない工夫も大切です。
リラクゼーション法や軽い運動は、心を落ち着け、腸の動きを正常に戻す助けになります。
たとえば、1日の終わりにベットの中で5分間だけ、深呼吸をしてみるのはいかがでしょうか?
これだけでも、呼吸法と呼ばれるリラクゼーションを日常に取り組むことで、心と腸が「ホッ」とする瞬間を作れます。
自分でできることにも限界はありますので、続くようなら専門機関の受診も考えてみてくださいね。
過敏性腸症候群(IBS)は、心と腸が密接に絡み合った、「現代病」ともいえる病気です。
そんな腸が「SOS」を出しているときは、心の声が聞こえにくくなっているサインなのかもしれません。
そんなときは、心の声にも耳を傾けてみましょう。
新しい年を迎えたこのタイミングで、腸との関係を見直してみませんか?
ストレス社会を生き抜くあなたの最強パートナーは、実は腸かもしれません!
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。