この連載は、ロングセラー『コンセプトの教科書』の著者で、株式会社TBWA\HAKUHODOチーフ・クリエイティブ・オフィサーの細田高広氏によるものです。本書の読者からは「教科書の名にふさわしい本!」「センスがなくてもコンセプトを作れることに感動した」「何度も読み返したい名著」など、喜びの声が多数寄せられています。
細田氏は、グローバル企業、注目のスタートアップ、ヒット商品、そして行列ができるお店をつくってきた世界的なクリエイティブ・ディレクター。新しいものをつくるとき、考えるとき、役立つヒントが必ず見つかるはずです。

「あの人、仕事のセンスあるよね」と言われる人が、無意識にやっている3つのことPhoto: Adobe Stock

センスとは何か?

 センスがあるとはどういうことなのでしょうか?

 結論から言えば、センスがある人が特に優れているのは「自分を認識する力」です。

 ファッションでも、スポーツでも、自分の特性を理解している人がセンスがあると言われるものです。

 ビジネスでも同様に、センスのある人は無意識のうちに自分の特徴を客観的に捉え、相手の期待との差を埋める努力をしているのです。

 本記事ではセンスを高める3つのステップについて簡単に解説しましょう。

ステップ① 自分を知る

 センスがある人は、自分の強みだけでなく、自分の「限界」もきちんと認識しています。

 ですから、必要な場面では周囲に頼ることができます。たとえば得意なプレゼンでは相手を惹きつけ、苦手な細かなデータ分析は専門家に頼む、といった具合に自分を効果的に配置できるわけです。

 この自己理解こそが「センス」の源泉です。この自己認識を間違えていると、変な背伸びをすることになり、それが「センスのない人」と思われる原因になります。

ステップ② 相手を知る

 仕事は、常に相手あってのものです。

 センスがある人は、上司・同僚・顧客が「何を求めているのか」を敏感に察知します。重要なのは、その期待値は常に言葉になっているわけではない、ということです。

 たとえば、話す際の表情や、服装の乱れ、メールの返信速度や、資料の細部の作り込みなど、非言語の部分にも言葉と同じように注目し、相手の「声なき声」を聞こうとします。

ステップ③ ギャップを埋める

 センスがある人は、自分の持っているものと相手の期待値との差を埋めるために具体的な行動を取ります

 たとえば、中東のあるホテルのレストランは料理にこだわってきましたが、ホテルの満足度はあまり向上しませんでした。あるとき、従業員のひとりが接客中に、客が本当に求めているのは料理以上に「思い出になるディナー写真である」ということに気づいたのです。

 そこでホテルはプロのフォログラファーを研修に呼び、レストランの従業員に「スマホで美しい人物写真を撮る方法」を学んでもらいました。結果、ホテルの「センス」はゲストに讃えられ、顧客満足度が大きく改善されたのです。

 センスは特別な才能ではありません。それは自分を知り、相手を知り、その間を埋めるプロセスを習慣化することで誰もが身につけられるスキルなのです。

(本記事は、『コンセプトの教科書』の著者・細田高広氏が特別に書き下ろしたものです。)