「ヤフー(現LINEヤフー)に入社した頃は、どこに行っても『インターネットって何?』と言われましたし、YouTubeのセールス責任者時代は、『こんなくだらないコンテンツに広告は出せない』と言われ続けました。そのたびに、『僕らの親世代がくだらない番組だと理解しなかったひょうきん族だって、あれだけのコンテンツパワーを持つようになった。それと一緒です』と、伝え続けた」と振り返る。
還暦を前に活躍のフィールドとして選んだのが、行政DXだった。「行政職員におけるデジタル化への不安は、かつて広告主から向けられたインターネットへの不安と同じ。だからこそ、絶対に良くなるという確信を持って挑んでいます」(近藤さん)
デジタルサービスを品質向上させるアプローチとは
018サポートのような改善を加速させるため、GovTech東京は品質向上の型化に着手した。その柱となるのが、製品やサービスの品質を「当たり前品質」と「魅力的品質」に分類する狩野モデルの導入だ。5段階評価で満足度3以上を「当たり前品質」、4以上を「魅力的品質」と定め、段階的な品質向上を目指している。
当たり前品質とは、自動車でいえばハンドルで曲がる、ブレーキが効くといった基本機能のことだ。この「当たり前」を確実に実現するため、DX事業の各段階で何をチェックすべきかを明確にしたリストを作成。都庁職員が自分でタイミングよくチェックできるよう、手順を標準化している。
さらに満足度4以上の「魅力的品質」も視野に入れる。これは乗り心地の良さやラグジュアリー感のように、あれば喜ばれる要素だ。2040年までに、すべての行政サービスをこの水準まで高めることを目指す。
開発体制の改革にも着手した。これまで行政のデジタルサービスは、すべての工程ないしは一部の工程を外部のITベンダーに委託するのが一般的だった。しかし、ベンダー任せでは、サービスの品質を適切に評価することも、迅速な改善を行うことも難しい。