「『しかし』という接続詞の後ろに重要な文がある、というようなテクニックばかりに頼っていると、本当の読解力は身につきません。安易にテクニックに逃げないようにしましょう」
TBS日曜劇場「御上先生」(主演・松坂桃李)第1話で、吉岡里帆演じる是枝文香先生はそんな指導をしていました。しかしその発言に反して、東大志望の多い生徒たちはテクニックに頼るような勉強ばかりをしている、というシーンがあります。
これはどの学校でも起こっていることであり、テクニックを使った勉強を指導して、それでテストでいい点数を取って、いい大学に入学して学歴を得て、上級国民予備軍になる、という今の教育には問題点があるのではないか、という批判の声もあります。
テクニックを使って指導することは良いことなのか? 悪いことなのか? 今回は、『5科目50年分10000問を分析した東大生のテストテクニック大全』(ダイヤモンド社)の著者であり、「御上先生」の教育監修をつとめる西岡壱誠氏が、元岡山大学准教授の中山芳一先生に、テクニックを使った指導の是非についてお話を伺いました。
「いい点数を取る」ための“テクニック”は教えるべき?
――中山先生は、テクニックを学校現場で教えることについてどのように考えていますか?
中山芳一先生(以下、中山):もしテクニックを身につける目的が『いい点を取れるようになる』というだけなのであれば、テクニックはあまり意味がないものになってしまうでしょう。でも、テクニックは『いい点を取れるようになる』ためだけのものではないと思うんですよね。
そのテクニックを得ることで、新しい問題を解く視点を得ることができるかもしれないし、新しい分野の勉強をすることができるようになるかもしれないわけです。『否定の接続詞の後ろを読めば、そこには筆者の言いたいことが書いてある場合が多い』というテクニックは、難しい文章を読んで、わからなくなってしまったときに使えば、今まで読めなかった問題が解けるかもしれないものなわけです。
そういう意味で、テクニックって、武器のようなものだと思うんですよ。いい武器を持ったら、新しいダンジョンに行くことができるわけです。
――ということは、テクニックを授業で教えることについて、先生はポジティブな考え方を持っていらっしゃるということで大丈夫でしょうか?
中山:そうですね。自分は、テクニック自体に対しては肯定的に捉えています。でも、多くの学校の先生・塾の先生たちにこの『テクニックを身につける目的』に関する視点が欠如しているのは大きな問題だと思います。
『いい点取れるからこのテクニックを使ってみろ』というのは、あまりにも乱暴です。そもそも、テクニックは『目的』と『手段』で言えば『手段』に該当するものです。『それを得ることで、何ができるのか』という目的を明確にして伝えるべきだと思います。