【3. コアメンバーの育成】

 推進者が中核となるチームを形成する段階。数百人規模の企業なら5~10人程度で構成。選抜方法は、公募型、指名型、巻き込み型などさまざまだ。

 コアメンバーに必要な素養として、初めからITスキルを挙げると非常にハードルが高い。ITスキルは活動していくうちについてくるもの。求められるのは、現場をより良くし自分も成長しようという向上心、これまでのやり方を変革することを恐れず積極的にチャレンジできる実践力、ITが苦手な人たちにも寄り添って教えられる伴走力だ。

【4. デジタル人材の拡大】

 コアメンバーの活動を通じて、現場から「こんなことができるのでは」という反応を引き出す段階。成功事例を積み重ねることで組織全体にDXの理解が広がり、デジタル人材が自然に増えていく。

 この段階では、社内での学び合いが活発化し、勉強会のコミュニティ化、独自の育成プログラムの開発、他社とのコラボレーションも始まったりする。失敗と成功を積み重ねながら、組織全体がDXで前を向いていく。

貴重な人材「ビジネスアーキテクト」はどこにいる?

 筆者自身、取材を通してビジネスアーキテクトの再現性は低いと感じてきた。実際に相対すると、まず人としてものすごく魅力的で、言葉一つひとつに経験に裏付けされた重みがあり、ズシンと来る。難しいのは百も承知で、成功企業のビジネスアーキテクト候補の探し方もお伝えしたい。

 まずは、「ITに詳しい人でなければならない」という思い込みを外すことが重要だ。実際、推進者には業務部門出身者も多い。特に製造業では現場で実力が認められていない人の話は聞き入れられない傾向がある。システム構築を外部に委託したものの、現場のニーズとかけ離れて失敗したケースも少なくない。そのため、生産管理や生産技術部門から、業務改善の実績がある人材を推進者に選ぶ企業が増えている。これを踏まえると、「既存の改善活動にデジタルを組み込めそうな人」という観点で社内を見渡してみるのも良さそうだ。

ビジネスアーキテクト適任者の特徴
・社長の片腕として機能できる
・熱意があり、人とのコミュニケーションが得意
・学習意欲が高く、自らデジタルツールを試すことを厭わない
・業務や会社、人のことをよく理解している

 選定後の支援体制も重要だ。推進者が若手や役職が低い場合、現場の協力を得られにくい可能性もある。経営者は裁量に加えて役職の引き上げなど、箔や後ろ盾の提供も考える必要がある。

 デジタル人材育成モデルは、IPAによる地道な取材や、有識者・実践者を中心としたデジタル人材育成ワーキンググループでの討議を通して見出されたもの。実際の資料ではより詳細なノウハウが得られるので、自社の状況と照らし合わせて参考にしてほしい。