つまり、今後は消費者が思う存分にサービスを消費することを最優先に考えるのではなく、どこまでのサービスは諦められて、どこからのサービスは譲れないのかを明確化していく必要があると思うのである。
このトレード・オフを解消する手立てもある。すべての人が幸せになれる方法は、当然に医療・介護産業の生産性が向上することである。
医療・介護産業の生産性が上昇し、より少ない労働力で多くのサービスを提供することが可能になれば、価格の低下とサービス量の拡大、さらには労働者の賃金上昇を両立させることは可能である。
実際に、近年、政府は医療・介護報酬の算定などにあたって、事業者の生産性上昇を促すための工夫を講じている。
技術革新が現場のすべての問題を解決するという楽観的な未来像を想定することは現実的ではない。しかし、それ以外の方法でこのトレード・オフを解消する手立てはないということもまた事実である。
記録業務の自動化や見守り・排泄介助におけるセンサー等の利用から、入浴介助や移動介助におけるロボットの導入など、先進技術を安価に導入させるためには、医療・介護産業の技術革新を社会全体の課題として全力で進めていかなければならない。
そして、これを開発し、導入するための事業者の努力を強力に促していかなければならない。
出生率上昇のためには
経済的なインセンティブが不可欠
外国人労働者の大量流入がない限り人口減少は確実にやってくる未来であり、短期的な解決は難しい。そうなれば、当面は人口減少を前提としたうえで新しい経済社会の仕組みを考えざるを得ない。
その一方で、より長期的な視点に立ったうえで日本経済を持続可能なものにするためにも、将来の出生率を上昇させていく施策は考えなければならないだろう。
家族のあり方が多様化するなか、出生率低迷の背後にはさまざまな問題が存在している。個人の自由意思で子どもを持ちたくないと考えている人がいれば、それは本人の意思として尊重されるべきである。