このタイプとして典型的なのは、さいたま市大宮にある氷川神社の参道である(図2)。神社から南方向に参道が伸び、中山道に対して斜めに接続している。一般に神社は南向きであることが多く、氷川神社でも本殿の向きに合わせたために、参道が中山道に対して垂直にならなかったと考えられる。また、江戸のある南方面から来る参詣者が多かったことも関係しているだろう。
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なかには、どちらも参道になっているようなY字路もある。京都府宇治市にあるY字路では、鳳凰堂が有名な平等院と、地元の神社である縣神社の参道が合流している。参道型のY字路は鳥居や社銘碑が建てられていることが多く、しばしばシンボリックな景観を呈している。
ここでは参道型Y字路を街道系の下位分類としたが、参道のY字路は必ずしも街道沿いにできるわけではない。例として、大阪府池田市にある呉服神社を見てみよう(写真5/図3)。この神社の参道には2つのY字路があるが、これは街道との交点にできたものではなく、明治末期に開発された新興住宅街のグリッドが神社の参道と異なる向きに設定されたことで生まれたものである。
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地形系Y字路その1
典型パターンは「立体Y字路」
地形系Y字路のなかで最も典型的なのが、立体Y字路である。左右の道がそれぞれ標高の異なる地点に向かって伸びているために、左右で勾配差が生まれたY字路である。台地の端や山裾にできることが多い。
「立体Y字路」という名前は、私の命名ではない。おもしろコンテンツサイトとして有名な「デイリーポータルZ」に掲載された、写真家の大山顕による記事「理想的な『立体Y字路』を探して」が由来である。本書ではY字路の分類名は基本的に「○○型」としているが、この類型のみはすでにある用語を優先し、「立体Y字路」とする。