日本の最難関クラス私立中学も「中国人家庭にとっては滑り止め」
徐さんは、元々は文京区の物件を探していたが、高すぎると判断。その後、「大島てる」を参考にするなど綿密な調査の末に、引越先として埼玉県さいたま市浦和区を選んだ。もちろん、娘をどの小学校に通わせるかを決めた上でのことだ。「浦和には名門小が二つあって、そのうちの一つにターゲットを絞り、近くの2000万円のアパートを買いました」
実は、都内の中国系不動産仲介業者の間で、浦和は「小文京」と呼ばれ、注目エリアになりつつある。「浦和には塾がたくさんあるので、『塾銀座』とも言われているんです」と徐さん。もとより、浦和区は文教地区として、日本人の子育て世代にも人気が高い地域だ。近年では公示地価の上昇も目立ち、より一層耳目を集めている。それだけに止まらず、徐さんによると、同じく文教地区として知られる埼玉県志木市が「小浦和」とまで呼ばれ始めているのだという。
![書影『潤日~日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』(東洋経済新報社)](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/200/img_73c1ba9faaf5bc9d9d106edf0338100e111732.jpg)
舛友雄大 著
「中受(中学受験)を検討しています。意中の学校もいくつかあります。栄東中とかですね。数学や英語といった科目は、中国の大都市の小学校は世界をリードするレベルなので心配していません。日本に行ってからは、主に弱点の日本語を重点的に勉強させるつもりです」と徐さん。栄東中学は、埼玉県最難関の私立中学で、日本全国で見てもトップクラスの人気校だ。しかし徐さんは「多くの中国人家庭にとっては、栄東も滑り止めですよ」と付け足す。
中国の教育熱をそのまま持ち込む形で、中国人が文京区やそれに準ずる文教地区を目指す動きは止まらない。中学受験は、首都圏で受験率が上昇を続け記録的な高さに達しているが、まだ日本人の子ども同士が競い合うイメージが強い。だが、今後は名門公立小を経由した中国人家庭の「参戦」が、ますます目立ってくるのは間違いなさそうだ。