需要が高まる一方、新たな課題も
一方では、文京区から中国新移民があふれるような事態も出現しつつある。2023年に日本に移住してきたばかりの中国人夫妻は、娘を文京区の公立小学校に通わせることを考えていたが、区内の「3S1K」以外のエリアで適当な物件を探したものの、「75平米で家賃35万円という高額物件しか見つからず(編注:文京区の家賃相場でその広さであれば特に高い物件ではない)、さらにその物件も外国人を理由に断られたので断念した」と話す。
夫妻の友人も文京区へ引っ越してきたのだそうだ。その物件は、もともと簡易宿泊施設だったためとても狭く、内装も奇妙だったとのこと。それでも、やはり区内のある特定の小学校に子どもを通わせるためだけに、我慢してその物件を選んだという。1年後、別の物件に引っ越した後も、近所から中国人のお母さんが大声で子どもに宿題をさせる声が聞こえてきて、「日本でもこんな状況か」と驚き、一瞬中国に帰国したような気分になったらしいと笑う。
中国の教育事情が悪化したために日本へ移住
現在、中国のある大都市に住む30代の中国人パパ・徐さん(仮名)は、来年日本へ移住すべく準備を進めている。中国で教育環境が悪化していることがきっかけだった。
「2023年に、久しぶりに母校の高校のイベントに行ったら、部活が高3からしか入れなくなっていました。保護者からリクエストがあったんです。『進学実績が落ちてきいる』と学校側にプレッシャーがかかったようです。今の子は、朝7時とかから夜中まで勉強が当たり前で、自殺する生徒も多い。こういうのを娘に経験させたくないので、日本に移住することを決めました」
中国では、近年、大学進学の門が狭まってきており、日本とは比べ物にならないほど熾烈な受験戦争が繰り広げられている。2021年ごろからは、不毛な過当競争を意味する「巻(ジュエン)」が流行語となった。もともと社会保障制度が整っていないこともあり、中国では教育へ投資を惜しまない家庭が多かったが、その教育熱がさらに加速し、ついには日本まで伝播してきた形だ。