部下からの信頼を得るための
「3ステップ」とは?

 部下から信頼を勝ち得るために、マネジャーは以下の「三つのステップ」を意識して行動することをおすすめします。

(1)「共有できる思い」を持つ
(2)「共有できる思い」の入ったチームのビジョンを描く
(3)日常の仕事に対話を取り入れて一貫性を保つ

 順に説明していきましょう。

(1)「共有できる思い」を持つ

 長く一緒に仕事をしていれば、部下が何をしようとしているか、何を考えているか、いちいち確かめなくてもわかるかもしれません。部下もあなたの考えがある程度わかっているから、仕事は進めやすいでしょう。

 これは、お互いの考え、思いが共有されているからです。

 一方で、共有できるものがないときはそうはいきません。例えば、マネジャーになったばかりとか、転職して日が浅く、チームにまだ溶け込めていない場合。

 こんなとき、メンバーはちょっとした距離感を保ちながらあなたと接するでしょう。「共有するもの」がまだ見当たらないからです。

 人は共有できるものがあると、人間関係に調和が取れ、関係性は安定してきます。逆に、共有できるものが見つからないと、本能的に警戒心を持って接します。

 あなたも、「この人は何か違うなぁ」と感じる人と出会ったことがあると思います。仕事相手だった場合、相手の出方を少なからず警戒しながら仕事を進めたことでしょう。それは、共有できるものよりも先に、違和感に意識が向くからです。

 では、何を共有すれば、信頼関係を築くことができるのでしょうか?

 それは、その人の仕事に対する情熱や思いです。

 ここで、部下の大切にしている思いを知ろうと焦ってはいけません。何よりもまず重要なのは、自分自身の仕事に対する情熱や思いを大切にすることです。

 あなたが、「実績がない」「日が浅いからどうまとめていいかわからない」といったことに意識を向けたまま部下たちの思いを理解しようとすると、自分と考えが違う部下に合わせなければいけないと思いがちです。

 自分の信じるものを大切にしながら部下の考えを受け入れるのと、部下の考えに合わせて振り回されるのでは、その後のマネジメントの質が全く違ったものになってしまいます。

 前者は理解力や共感力のあるリーダーですが、後者は「自分軸のない」リーダーです。

 まずは、自分にあるものに目を向け、自分の軸を明確にすることを意識しましょう。

 あなたが仕事で大切にしたい思いは何か。そのためにはどのように臨むのか――。あなたの思いを言語化して、そこに確信を持つことです。

 その上で、部下と向き合います。部下が仕事において充実感ややりがいを感じることは何か、大切にしている思いは何かを知ることです。

 ただ、いきなり「あなたの仕事に対する思いを聞かせてください」と直球の質問を投げかけても、部下はなかなか答えられないでしょう。

 そこでおすすめなのが、「過去の体験」を聞いてみることです。

 これまでに成功したこと、失敗したこと。そしてそのとき何をどう感じたのか。さらに、これからはどのように仕事を通して充実感を得たいのか、などを聞いていくといいでしょう。

 その上で、話を聞いてみた感想をフィードバックとして伝えます。このとき、批判的なフィードバックではなく、部下の話の良いところ、共感できるポイントをフィードバックすることを意識します。

 そして、改めて「あなたが仕事をしていく上で大切にしていることは何か?」を聞いてみると、部下の価値観は言語化されます。

 このプロセスを通して部下は、あなたが相手を理解する姿勢を見せてくれる人だと認識し、信頼を寄せてくれるようになります。