(2)「共有できる思い」の入ったチームのビジョンを描く
リーダーであるあなた自身が大切にしたい思いが明確になり、部下の思いも聞くことができたら、次はあなたと部下の「思いを共有する」ことが信頼関係の強化につながります。その際、効果の高い方法が、チームのビジョンを作ることです。
あなたのチームが求められている役割を明確にして、どんな価値観や信念を持って何を作り上げていけると、会社に貢献できる理想的な職場になれるのか。自分の独断ではなく、部下の思いや考えを吸い上げながら職場のビジョンを描きます。
ビジョンとは、未来の青写真のことです。目指す未来への思いが共有できれば、目指す方向も同じになります。意義のある目的や役割、大切にしたい明確な価値観、そして作り上げたい理想の未来像をビジョンとして共有するのです。
ただ、これだけでは不十分です。
(3)日常の仕事に対話を取り入れて一貫性を保つ
「ビジョンは一度共有したからわかっているはずだ」
これは危険な思い込みです。人は基本的に忘れる生き物だからです。心理学者のヘルマン・エビングハウス氏は、「人は覚えたことの70%以上を24時間以内に忘れる」と言っています。
ビジョンを実現に向かわせるには、忘れないように、一貫してあなたも部下もビジョンを意識し続けることが重要です。そのためには、事あるごとに実務の内容をビジョンに照らし合わせて、評価やフィードバックをすることです。
部下の行動や成果がビジョンに近づくものだったら、言葉に出して称賛しましょう。逆に、ビジョンに向かう方向と矛盾すると判断したときは、どうやったらビジョン実現の方向に向かえるのか、そのためにあなたができることは何かないか、考えてもらうようにしましょう。
こうしたやりとりを通して、あなたがマネジャーとしてチームのビジョンを大切にしようとする姿勢が伝わりますし、部下も何を求められているのかが明確になってきます。
部下とのコミュニケーションでは、「対話」を意識することもポイントです。
対話と会話は違います。
「会話」は目的がなく相手の気持ちを理解する必要がないのに対して、「対話」は目的を持って、相手を理解しようとする姿勢、相手と向き合うことが必要です。
対話のポイントは、目的を共有すること、そして質問とフィードバックを多用して、相手の考えを言葉で引き出すことです。
こうした対話を継続的にできるようになると、部下は徐々に自ら考えて行動するようになっていきます。
部下との信頼関係をゼロから築く経験が
リーダーシップのスキルを上げる!
組織へのエンゲージメント(貢献欲求)が高いことで知られる、スターバックス コーヒーでは、「上司は問題を解決する人ではなくて、どうすれば解決するのか教わりに行く人」(毛利英昭著『だから、スターバックスはうまくいく。スタバ流リーダーの教科書』より抜粋)と考えているそうです。
部下の思いを引き出し、自分の思いを語り、双方の思いが共有できるチームのビジョンを描く。そして、ビジョンの実現を目指す実務のプロセスで対話を意識的に行っていく――。これを徹底すれば、あなたもスターバックスのようにエンゲージメントの高いチームを作ることができるでしょう。
部下との信頼関係が築けていない状況は、逆に考えれば経験値がないところで共有できるものを作り出すチャンスでもあり、あなたのリーダーシップスキルを磨く絶好の機会です。
今後異動や転職をすることがあったとしても不安を感じることのないように、あなたのマネジメントの引き出しを増やしていきましょう。
部下の信頼を勝ち取る3ステップを実践しよう
(1)「共有できる思い」を持つ
(2)「共有できる思い」の入ったチームのビジョンを描く
(3)日常の仕事に対話を取り入れて一貫性を保つ