水原被告と身内や友人が
裁判所に提出した「書簡」

 加えて、水原被告や彼の家族や水原被告の友人がそれぞれ書いて裁判所に提出した「書簡」を考慮してほしいとフリードマン氏は嘆願した。

「これだけ世界中からの注目を浴びている裁判で、あえて自ら裁判所に手紙を書いて被告人を弁護しようとする人はいない。それにもかかわらず、ミスター水原がどれだけ身を粉にして一生懸命に仕事をしていたかを書簡に記してくれた人たちが複数いる。それが彼の人格を裏付けている。あの時、彼がボウヤー氏と出会いさえしなければ……」とフリードマン弁護士は力を込めた。

 GenuineやUniqueなどの形容詞を多用して水原被告の「本来の人となり」を強調し「ギャンブル依存症」という魔物の前で無力だった水原氏の姿をできる限りドラマチックに演出する。それがセレブ弁護士として名高いフリードマン氏の戦略のようだった。

 それに対し、ホルコム判事は落ち着いた柔らかい声で「ちょっと私には理解できない点があるのだけれど」と言いながら、フリードマン氏に尋ねた。

「そのような状況下だったから、必要以上に重い刑罰を裁判所は下すべきではないという主張なのか?または、ミスター大谷が大金を盗まれたことを気づかなかった無防備さを考慮に入れろということか?また、この事件と他のギャンブル犯罪事件では、根本的にどこが違うと言いたいのか?」

 フリードマン氏は「もちろんミスター水原は責任を回避するつもりは全くない。ただ彼のユニークな状況を考慮してほしい。すでに専門家の医師の鑑定も受けて、ギャンブル依存症の治療に専念しているわけだし」と言い、形容詞とギャンブル依存症を使って食い下がる。

 そこからホルコム判事は穏やかな柔らかい声で、水原被告の「書簡」の中身について質問した。

「『Severely Underpaid(とんでもなく安い報酬しかもらっていなかった)』という表現があるが、それが犯罪の“動機”なのか?」。

 犯罪の動機という言葉をフリードマン氏は即座に否定したが、ホルコム判事の質問はさらに続いた。

「検察の調べによれば、ミスター大谷がミスター水原のニューポートビーチの住居の家賃を払っていたということだけど?」

 するとフリードマン氏は隣にいる水原被告に耳打ちして何か質問した後、判事にこう答えた。「I believe yes(はい、そうだと思います)」。